自由民主党本部 (C)週刊実話Web
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夏の参院選に遺恨…『石川県知事選』仁義なき“保守3分裂”裏リポート

加賀百万石、保守王国・石川県が揺れている。


28年ぶりの新知事誕生となる県知事選(3月13日投開票)で保守系候補3人が乱立し、うち2人が自民党の安倍派というまさに分裂状態に陥っているのだ。誰が勝っても自民党内は4月の参院補選、今夏の参院選で遺恨を残すことになった。


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「県知事選には5人立候補しているが、事実上、保守系候補3人の争いとなっています。3人とは、安倍派で森喜朗、安倍晋三といった両元首相の全面的バックアップを受けている前衆院議員で元プロレスラーの馳浩元文科相。2人目は安倍派の前参院議員・山田修路氏。3人目は3期11年の長期にわたり金沢市長を務めた山野之義氏です」(石川県議会議員)


保守系候補が乱立した背景には、地元で多大な影響力を持つ森元首相が起因している。「強引な現知事引きずり下ろし作戦が仇になった」(同)という。


「全国最多の7期知事を務めている〝北陸のドン〟谷本正憲知事は8期目を目指す肚だった。だが、森元首相とは犬猿の仲。というのも、かつて衆院石川旧1区は『森奥戦争』と言われるほど森氏と故・奥田敬和元運輸相が激しい政争を繰り広げていた。谷本知事は奥田派。そのため、奥田氏亡き後も森氏と谷本知事の間では遺恨が残り、バチバチ火花を散らしてきた」(同)

総出で馳氏応援に駆けつける

その谷本おろしに手を挙げたのが、森元首相の〝子飼い〟である馳元文科相だったのだ。

「谷本知事が去就を明らかにしてない昨年夏、馳氏が知事選出馬を表明し外堀を埋めていった。高齢で多選の批判もあった谷本知事は追い詰められ引退表明した。それに反発したのが谷本知事派と旧奥田派系列の保守派。対抗馬として同じ安倍派に所属する元農水官僚の山田氏を担ぎ出した。そのため安倍派は真っ二つとなったのです」(同)


焦ったのは、現安倍派会長の安倍元首相だ。


「先輩の森元首相に頭の上がらない安倍氏は上から目線で山田氏に『困るんだよ』と出馬断念を迫った。しかし、山田氏は猛反発。山田氏には立憲民主党と社民党などが支援に入り、もはや抜き差しならない関係となった」(金沢市議)


「馳」VS「山田」の混乱を見て、間隙を突いたのが山野前金沢市長だ。


「山野前市長は競輪場外車券売場設置計画をめぐる疑惑などで2014年に出直し市長選もやったが、これをしのぎ、計3期11年市長を務めてきた。今回、保守混沌の様子を見た山野氏は石川県財界や若手自民党県議らに推される形で出馬した」(同)


選挙アナリストが言う。


「マスコミや自民党などの事前調査では、森・安倍の両元首相が担ぐ馳氏は3位だった。トップは山野氏で2位が山田氏。この結果に仰天したのが森&安倍元首相ら自民党執行部。安倍氏はテコ入れで隙間風が吹いていた菅義偉前首相に接近し、菅氏が太いパイプを持つ公明党=創価学会へ協力要請したと聞く。森人脈の東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長も馳氏応援に駆け付けた。また、昨年の衆院選石川1区で4万5663票を集め、勢いを増す日本維新の会の支援も取り付けた」

地元候補が頭ひとつリード!?

その甲斐もあってか、直近の事前調査では馳氏が支持を増やし、3氏は横一線に並んだという。

「当初は馳氏と山田氏の股裂き状態に頭を抱えた安倍氏だったが、山田氏に立憲民主党や社民党が支持の方向となり吹っ切れた。自民党県連は自主投票だが、党本部は安倍派中心でなりふり構わず馳支援に入ると決めたようだ」(自民党議員)


選挙期間中は安倍元首相を筆頭に、高市早苗政調会長、河野太郎党広報本部長、小泉進次郎前環境相などが現地入りし、馳支援に回る予定だという。


オール自民に対抗する山田氏、山野氏陣営もただ手をこまねいているだけではない。山田氏支援の地元市議が言う。


「いくら知名度のある国会議員を投入しても、地元の自民党県議32人中、20人以上は山田氏を支持している。地方ではどれだけ地元で汗をかいたかがモノを言う。漁業や農業関係者は農水畑で骨を折ってきた山田氏を知っていますからね。山田氏の出身地・加賀市などの2区、能登地方の3区は頭ひとつリードしている」


山野前金沢市長支持の県議も強気だ。


「山野氏は元ソフトバンク社員だっただけに、経済に明るく人脈も豊富。石川県の有権者は約95万人だが、最大票田は37万7000人を抱える金沢市だ。その市長だった山野氏の知名度は抜群。約3割を超える無党派層にも山野氏が一番強い。最後は勝ち切る」


山田氏の参院議員辞職に伴い参院補欠選挙(4月24日投開票)が行われる。自民党は宮本周司参院議員の擁立を決めた。夏の参院選には現職の岡田直樹氏擁立で動き出している。


「知事選で山田氏か山野氏が当選した場合、保守王国・石川に地殻変動が起きる。つまり、野党が活気づくわけです。それは全国に波及する可能性がある」(自民党幹部)


仁義なき石川県知事選で、新首長になるのは果たして誰か。