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『ヤマブキベラ』東京都八丈島/八重根産〜日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

2月中旬から4月上旬にかけて、冬の終わりから早春へと季節が移り変わるこの時期は、年間で海水温が最も低いこともあって、陸からの釣りには厳しい時期といえます。

寒ブナ、寒バヤ、寒クロダイ、越冬ギスなど、この厳しい状況下のなかで価値ある釣果を求める〝寒の釣り〟というものもありますが、ワタクシにそのような忍耐力などあるハズもなく…。

そこで、水温がそこまで低くなく、なんやかやとイージーに釣れる南の島でヌルい釣りに興じるのが、この時期の恒例となっているのであります。

今回は東京都、といっても東京から南へ約300キロメートルの八丈島へ、釣り仲間とともにやってまいりました。太平洋にポツンと浮かぶ潮通し抜群の南の島なので、いくら低水温期とはいえ、ここまで来れば何かしら面白い釣りができるはずです。

空港に降り立ち、レンタカーで、釣り場へ向かう前にスーパーにて食料品や飲み物を確保。島内にコンビニがないので、買い出しは数軒あるスーパーとなります。そして、このスーパーが昭和テイストなどこか懐かしい雰囲気のあるお店で、釣行前の買い出しもまた楽しい時間といえます。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

買い物を終えて、向かった先は八重根桟橋です。桟橋とはいえ、もろ外洋に面しており大物実績の高い釣り場ゆえ、今回も到着してみると先端部は地元の方々とおぼしき釣り人で埋まっており、真ん中から先端にかけても、それなりの間隔で先客が竿を出しております。

わりと大きめのアタリに反応!

せっかく離島まで来て窮屈な釣りをするつもりもなく、何よりワタクシなぞは大物回遊魚(カンパチやヒラマサなど)や大型石物(イシダイ、イシガキダイ)を狙うような気合いの入った釣り人ではありません。「とりあえず、南の島らしい面白くて美味しい魚が釣れればOK」ということで、桟橋の入り口寄りの空いている所に釣り座を構えることにします。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

桟橋から海をのぞくと、いかにも黒潮圏の外洋といった濃紺の海中に、何やらチラホラと魚影が見てとれます。低水温期の本土では、全く魚っ気のない水中なんてことがザラですから、さすが離島といったところでしょうか。はやる気持ちを抑えつつ道具をセットしてエサを付け、仕掛けを投げるのももどかしく、手っ取り早くアタリの出そうな足下に仕掛けを沈めます。水深は7~8メートルほどで、外洋らしく25号のオモリが右に左にと、波の力で流されます。

コツッ! コツコツッ! 早くも出た反応に竿を煽ると、早速釣れたのはササノハベラ。うーん、ここまで来て求めているのはオマエさんではないんだなぁ。リリースして再び足下に仕掛けを入れます。コツコツッでまたササノハベラ。この時期、すぐにアタリがあるのは嬉しいけれど、ササノハベラは本土でも普通に釣れますからねぇ…。

エサを付け替えてはササノハベラを何回か繰り返すうちに、今までとは違ったゴツッ! とわりと大きめのアタリが出ました。反射的に竿を煽ると、ゴクゴクッ! と力強い手応えが伝わります。「ようやく、何かよさげな魚が来たのでは?」と鋭い引きを楽しみながら巻き上げます。上がって来たのは〝これぞ南の島の魚〟といった派手な色合いをしたオスのヤマブキベラです。しかも30センチほどと、この魚にしてはかなりの良型。どうりでヒキも強いわけですな。

ヤマブキベラ
ヤマブキベラ (C)週刊実話Web

オウムにも似たかわいらしい顔つき

このヤマブキベラ。派手な見た目からしても本命魚になりうるハズもなく、一般的には喜ばれる魚ではありません。ここ八丈島や、あるいは沖縄などではイシガキダイなどの石物を狙った釣りで外道として掛かることがあり、相手にされることも、もちろん賞味されることもまずありません。それでも、いいんです。自然の素晴らしさを感じるほどに見惚れてしまう色合いの美しさ、オウムにも似たかわいらしい顔つき、そしてガツガツと下品ながらも力強い手応えなど、個人的にはこの魚が大好きなのであります。

ヤマブキベラの姿造り
ヤマブキベラの姿造り (C)週刊実話Web

そんなヤマブキベラを、今回は姿造りで賞味。せっかくの美しい魚ですから…。見た目に反して綺麗な白身は上品で淡白。加えて、焼き霜造りにした身の方は皮目が香ばしく、どちらも美味です。見ても食べても楽しめるヤマブキベラをつまみつつ、日本酒をチビリ。

見て美しい姿造りなのだから、女体盛りにも匹敵する魚として、もっと評価されてもよいのではなかろうか? と一瞬思いましたが、ただのベラなのでそこまでは力不足かな…と思い直しました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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