『永遠の1分。』
監督/曽根剛
脚本/上田慎一郎
出演/マイケル・キダ、Awich、毎熊克哉、片山萌美、ライアン・ドリース、ルナ、中村優一、アレクサンダー・ハンター、西尾舞生、渡辺裕之
配給/イオンエンターテイメント
「3・11を題材にしたコメディー映画を」という着想は、ドキュメント的な震災映画が多い中、かなり攻めた企画です。で、ハマっていれば、かなり見応えのあるものになっていたはず。
本作は、あの『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が脚本を、撮影監督を担っていた曽根剛が監督としてメガホンを取った映画。言わば「カメ止め」チームの作品です。
「被災者ではない自分が3・11を描くのはずっと後ろめたい気持ちがあった」という曽根監督が、上田氏に脚本を依頼したのは2013年。上田氏もまた「自分のような『部外者』が震災を描く資格はない。しかし、『3・11を題材にしたコメディー映画を創ろうとする人の話』であれば書けるかもしれない」と思いつくところは、さすが「カメ止め」の監督です。しかし、諸事情でなかなか製作には至らず、その上、コロナ禍もあって脚本の改稿は14稿に至ったそうです。結果、究極の『部外者』である「アメリカ人監督が3・11を題材にコメディー映画を撮ろうとする物語」が、1本のドラマになりました。
どんな笑いにするのか期待したが…
ただ「日本の大震災だけでなく、あらゆる困難な状況で、人にはユーモアが必要だ」という着眼点に、中身が追いつかなかった…というのが率直な感想です。
何と言っても、劇中劇として上映された映画がだだスベリ。見る方としては、11年経ったとはいえ記憶も生々しい3・11を、アメリカ人監督はどんな笑いにするんだろうと期待してしたんですが…。
アメリカのスタンダップコメディーが日本人には笑えないということがままありますが、万が一にもアメリカ人の笑いのセンスがこの程度だろうということであれば、この主演俳優にも失礼ですしね。
映画の中では、週刊誌に「不謹慎! 外国人が3・11をコメディーに!」と非難する記事が出ます。当然、そういう声が出るのは承知していますよというエクスキューズを、本作の製作サイドがあらかじめ仕込んでいるようにも思えました。
結局、本作の見所は、アメリカ人監督が「つらい時でも思わず笑ってしまったエピソード」を被災者の方に聞いて回っている、ドキュメントにも見えるシーン。そして、自分が一番感情移入できたのは、誹謗中傷記事を書いた渡辺裕之演じる編集長だった気がします。
さて、実は上田監督の注目の新作『ポプラン』も見ました。これまた相当にくだらない(ホメ言葉!)B級どころかD級喜劇映画なんですが、まだこちらの方が振り切っているかも。ぜひ、比べて見ていただきたいです。
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
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