餃子“3強時代”突入! 宮崎市VS宇都宮市VS浜松市~企業経済深層レポート
昨年1年間における餃子の世帯当たり購入額で、宮崎市が初の全国1位となった。餃子といえば従来、宇都宮市(栃木県)と浜松市(静岡県)が長年1位の座を競ってきたが、新星の宮崎市が奪い去った格好だ。
一般的にも注目度が高い「餃子消費日本一」の実情を経営コンサルタントが明かす。
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「日本一を決める仕組みについて簡単に解説すると、参考にするデータは総務省統計局の家計調査で、1世帯(2人以上の世帯)における購入頻度や支出額を集計して分析しています」
この調査は外食などが対象外で、スーパーなどで販売されている生餃子、焼き餃子の購入額が基準。都道府県の県庁所在地や政令指定都市など、全国の主要52市をランキング化して集計しているという。
その結果、2021年の家計別餃子支出額は、宮崎市が総額4184円で1位、浜松市が3728円で2位、宇都宮市が3129円で3位となった。では、なぜ宮崎市が躍進したのか。
宮崎市の観光関係者が解説する。
「宮崎には昔から〝持ち帰り文化〟が根付いています。この習慣がコロナ禍での巣ごもりでプラスに働き、餃子のテイクアウト専門店が浸透したことで売り上げが落ちなかった。また、お中元やお歳暮に餃子を贈る機会も多く、これも日本一に貢献しました」
町おこしは“バブル期”がヒントに
もう1つ宮崎市に勢いをつけたのは、20年9月に『宮崎市ぎょうざ協議会』が発足したことだ。「地元の餃子専門店をはじめ、餃子卸会社、中華料理店などで構成され、発足以降は宮崎市の餃子購入頻度が加速しています。餃子での町おこしを目指し、各種イベントや他県を訪れてのキャンペーンを実施したことで、市民の間にも1位を取りたいという意識が芽生えてきました」(同)
では、全国1位になると、どんなメリットがあるのか。前出の経営コンサルタントが言う。
「各市が餃子消費アップに躍起になるのは、トップになれば日本一の看板の下、観光や関連食材の生産にプラスとなり、地域経済が大きく活性化するからです」
宇都宮市を例に検証してみたい。同市は総務省調査で、1世帯当たりの年間支出額が10年まで15年連続で日本一、13年、17年、19年も日本一の座を獲得するなど「餃子のまち」として有名だ。
食品メーカー関係者がその経緯を解説する。
「80~90年代の日本がバブルに沸いた時代、ふるさと創生の名の下に全国各地で町おこしイベントが行われた。そのネタを探していた宇都宮市では、餃子消費が日本一であることに目をつけ、市を挙げて餃子のまちを宣言したのです」
戦後、旧満州から引き揚げた部隊により、宇都宮市にはおいしい餃子店がたくさん生まれた。しかし、同市の餃子がおいしいということは、全国的にはまだ知られていなかった。
東京一極集中が崩れるコロナ禍
「93年に山田邦子がMCを務めていた『おまかせ!山田商会』(テレビ東京系)で、7度にわたり宇都宮餃子の企画が放送されると、一気に知名度がアップ。宇都宮と言えば餃子という認識が全国に広がった」(同)宇都宮市の観光関係者は言う。
「市の観光動態調査によれば、コロナ前の19年に宇都宮を訪れた観光客は約1480万人、観光消費額は896億円にのぼった。このうち餃子を食べたという人は半数以上の54%で、餃子の経済波及効果は数十億円とみられています」
一方、ここ数年にわたり宇都宮市と日本一の座を競ってきた浜松市の場合はどうか。同市で餃子を販売する専門店の店主が、浜松餃子の背景について語る。
「浜松市では戦後まもなく、駅周辺の屋台を中心に餃子が盛んに食べられていた。2000年代に餃子を愛するボランティア団体が、宇都宮市を超える勢いで餃子支出額が高いことに着目し、日本一を宣言したことで一躍有名になりました」
以来、総務省統計に基づく世帯消費量では、宇都宮市と一進一退で競い合い、浜松市は11年と12年、14年から3年連続、18年と20年にも日本一に輝いている。
金融系シンクタンクの研究員が指摘する。
「21年の総務省統計によれば、餃子の平均世帯消費額は全国で2093円。日本の世帯数(2人以上の世帯)を約4500万世帯とすると、餃子市場は約950億円に及ぶことになる。しかも、餃子の経済波及効果の伸びしろは相当あるので、今後も日本一を目指す都市は増えるとみられる」
実際、21年の餃子購入額を見ると、3位の宇都宮市に千葉市が肉薄しており、現在の3強だけでなく他市の動向も見逃せない。
「テレワークの浸透で、何事においても東京への一極集中が崩れつつある。そのため、これからは餃子だけでなく、さまざまな食を通してメーカーとのタイアップが生まれ、地方の町おこしがより活発化する可能性が高い」(同)
食文化が地方都市躍進のきっかけとなるのか。
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