蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~プロレスラーの独特なトレーニング法

女子プロレス界の大ヒール、ダンプ松本選手の半生を描いたドラマ『極悪女王』が、Netflix(ネットフリックス)で制作されているそうだ。主役のダンプ松本役は、ゆりやんレトリィバァさんが演じると報道された。


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ゆりやんさんといえば、ここ数年で40キロ以上のダイエットを成功させていて、すっかり見違えたスタイルになっているんだけど、このダンプ松本さん役を演じるために今度は50キロの増量指令が出されたという。


このニュースが本当かどうかは分からないけど、確かに全盛期のダンプ松本選手は100キロくらいありそうだから、それに似せるために元の体型に戻すということなんだろうね。とはいえ、プロレスラーらしい体つきにするんだったら、ただ太ればいいというものでもない。ちゃんとトレーニングをして、筋肉をつけてウェイトアップしないとダメだろうけど、それでも50キロ増量は難しいと思う。


俺は、新日本プロレスに入門する前の高校サッカー時代は82キロ~83キロくらいで、そこからデビューして闘魂三銃士を結成する頃には100キロになってたから、プロレスラーとしてのトレーニングを積んでやっと20キロ乗せられたという感じだった。


新弟子の頃は体重を増やせと言われて、1日5回くらいメシを食ってたけど、どれだけ食べても練習や試合でカロリーを消費するから、なかなか体が大きくならない。


その点、橋本真也選手は才能があったね。食べれば食べただけ体重が増えていく(笑)。


例えば、一緒に焼き肉を食べに行って、それぞれ3キロくらい平らげたとしても、俺は代謝がいいのか、道場に戻ってきてすぐ体重計に乗っても1キロくらいしか増えてない。でも、橋本選手はそのまま3キロ増えてるんだから効率がいいよ。

「メシなんて噛まないで飲み込め」

だから俺は量を食べるために、まず胃袋を鍛えた。米とか、ゆっくり消化するモノを詰め込むように食べて、胃を拡げて消化力を強くする。

先輩からは「メシなんて噛まないで飲み込め」とゲキを飛ばされて、無茶言うなよと思ってたけど、あれは「よく噛んで食べると、消化吸収がよくなって体に負担が少ない」という健康法とは真逆の行為で、とにかく詰め込んで胃を鍛えるというトレーニング法だったのかもしれないね。


「食えなかったら水を飲んで腹を膨らませておけ」とまで言われて実践してたけど、そんな食べ方をしてたら、当然、体には悪いよ。だから、プロレスラーというのは試合の後遺症で首や腰、関節にガタがきてるもんだけど、内臓にもかなりのダメージが蓄積してると思う。それを乗り越えていまも元気で活躍している先輩やレジェンドレスラーの方々は、やっぱりカラダの作りが違うというか、超人だよ。


ひと昔前のハリウッド俳優なんかは、役によって痩せたり太ったりしてみせて、それがプロの役者魂なんて言われてたけど、あんなの体に負担がかかるからやめたほうがいいよ。


今や特殊メークも精巧になってるし、CGを使えばなんでもできる。Netflixなら予算があるだろうから、そのあたりにカネをかけて、役者が体重の増減なんかしないでも迫真のドラマをみせてくれるようにしてほしいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。