
『これやこの』(角川書店:サンキュータツオ 本体価格1400円)~本好きのリビドー快楽の1冊
2020.12.02
エンタメ
寄席に出演しない立川流の噺家で、知名度で群を抜いているのは志の輔、談春、志らくと皆、家元談志が落語協会を脱退した後の弟子ばかりが売れているように見えるかもしれない。だが、古くからの高弟もそれぞれ得難く渋い個性の持ち主なのは当然で、中でも忘れられないのが立川左談次。
古典落語のあいまに「後頭部(江東区)深川」「ないがしろ(前頭)三枚目」などとダジャレをさりげなく放り込む軽みに満ちた高座ぶりはもちろん、本を数冊抱えて現れ、ひたすら記述のおかしさをぼやき気味にあげつらってゆく『読書日記』のようなネタも印象深い。俳句とローレンス・ブロックを愛し、煙草の銘柄は必ず「峰」。打ち上げで酒以外に何かつまみを口にする姿を見せたことのない、とにかくダンディーな師匠だった。
筆致の行間に澄んだ悲しみ…
一方、人間国宝・柳家小三治門下で絶妙な加減で漂わせる脱力感と飄逸味に溢れ、その確固たる技と芸風に熱狂的な中毒者を続出させたのが柳家喜多八。従来の演芸界のルールやしきたりにとらわれず、無心に若い初心者層の開拓を狙ったイベント〝渋谷らくご〟で競演し、見事に新規の聴衆の心を掴む両者だったが、奇しくも相前後して共に病魔に襲われてしまう。
仕掛け人の立場でイベントを主催しつつ、自らも漫才師として舞台に立つ著者が、敬愛する両師が癌で不帰の客となるまでを静かに綴った表題作を先頭に、学生時代にアルバイト先で出会った古書店主(マニアックな古本好きの間では有名な歌人でもあった中川道弘)や62歳で「早稲田文学」新人賞の向井豊昭、そして、自身のライブを支えた一女性スタッフに及ぶ故人たちを追想した肖像画のごとき墓碑銘。抑えた筆致の行間に澄んだ悲しみが立ち昇る。
(黒椿椿十郎/文芸評論家)
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