Ⓒ2022 映画「余命10年」製作委員会
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『余命10年』/3月4(金)より全国公開〜LiLiCo☆肉食シネマ

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冒頭で一瞬グッときて、その後は葛藤の連続ジャブ。そして最後に、これでもかっていうほど何度も涙腺崩壊のストレートパンチを打たれ、脳みそが溶けて鼻から流れ出るかと思いました。


余命モノは今までもたくさんありました。命に期限があることが分かると大切に生きようとする。でも日頃忘れているのは、そもそも人間には早かれ遅かれ期限があること。人生どうなるのかが分からないからこそ楽しんで毎日をすごすのですが、心のどこかには事故や病気など、常に死への怖さは隣り合わせです。


思い描いていた人生があるのに…病でそれを叶えられない。主人公の茉莉を演じる小松菜奈の感情の波に、心揺さぶられます。その悔しい気持ちに胸が痛くなる。頑張っても、どうせ長くないから…と家族にも当たってしまったり、その気持ちがよく理解できます。


余命を宣告された茉莉と、生きる希望を失った和人(坂口健太郎)。かつて同級生だった2人は、同窓会で再会します。しかし、急接近する2人の〝生きる〟ことに対しての価値観の違い、それが壁になる。茉莉は恋をするのが怖い。なぜなら、いい思い出が増えれば死ぬのが怖くなるから。そんな2人が惹かれ合う中で、どんどん変化していくのです。

自分の人生とも重なり、すべてが染みる…

山田裕貴演じる友達役がすごくイイ! こんな人、実際にいますし、自分の周りにもいてほしい存在です。盛り上げ役、お調子者とも言えるけど、温かみに溢れている。そしてお父さんを演じる松重豊。多くは語らないけど愛情が滲み出てる。茉莉の姉を演じる黒木華や、お仕事のチャンスをくれたお友達役の奈緒など、もう全部がハマってて、最後に流れるRADWINPSの『うるうびと』が染みる染みる。いい涙活になりました。

出演者だけではありません。ロケの場所や季節の切り取り方も素晴らしい。あと、これは完全に〝インテリア大好き人間〟な私の個人的な視点だけど、日本の映画になると、どこか〝おしゃれ〟な室内装飾が殺風景に見えがち。でも、本作はすべてにこだわっていて、魅了されてしまいました。


茉莉が描いていた将来がある。あなたにもきっとありますよね? この映画は、自分の人生を改めて考えるいい機会。そして気づく。生きているからこそ、その目標に近づくチャンスがある。涙を流しすぎてカラッカラになったけど、そこから蓄えたものは生きる希望に満ちています。
LiLiCo 映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。