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バブル崩壊!? 日米株価・熱狂の裏側~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

森永卓郎
森永卓郎 (C)週刊実話Web

米国株が史上最高値を記録する中、日経平均株価もバブル崩壊後の高値を更新し続けている。3連休明けの11月24日から4日連続の年初来高値を更新。26日には、1991年4月以来、約29年7カ月ぶりに終値ベースで2万6500円台に乗せた。

この株高は明らかに異常だ。景気全体を表す景気動向指数は、緩やかに改善しつつあるとはいえ、9月の一致指数は80.8と、1年前の99.7と比較して大幅に下がっている。

もちろん、株価は過去の経済を映し出すのではなく、半年ほど先の未来を映し出すものだ。しかし、景気の先行きも極めて厳しい。1つは、バイデン大統領の誕生だ。9月に終了したアメリカの2020会計年度で、米国は330兆円もの財政赤字を出した。トランプ大統領が派手なバラマキをやったからだ。一方、バイデン氏は「常識人」だから、財政バランスを回復させる方向に舵を切るだろうし、公約した富裕層への増税も実行するだろう。財政緊縮は確実に景気後退の要因となるから、少なくとも短期的には米国経済の足を引っ張ることになる。

そこにのしかかるのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。欧州各国で過去最多の新規感染者数が更新される中、アメリカでも11月20日に報告された新規感染者数は、19万人を超えて過去最多となっているのだ。欧米と比べたら被害が小さい日本も、ここ数日連続で2000人超となっている。それにもかかわらず、政府はGoToキャンペーンを継続しているのだから、今後、爆発的な感染拡大に結び付いていくのは確実な情勢だ。

ところが、冒頭に述べたように日経平均株価は、感染者が過去最多を更新し続ける中で、最高値を更新しているのだ。その構造はニューヨーク市場も同じ。私は、今や株式市場が、完全な鉄火場と化しているのだと思う。経済や企業業績など関係なく、純粋な投機で株価が形成されている。つまりバブルの発生だ。

株価バブルの“満期”が近づいている

17世紀のオランダで、チューリップの球根に対する世界初のバブルが発生した。ガルブレイスによると、ピーク時には球根1つに「葦毛の馬2頭と馬車と馬具一式」と同じ値段がついたという。それでも、直前まで誰も異常な高値を指摘しなかった。陶酔的熱狂だ。

シラーPERという株価の割高を示す指標がある。この指標が25倍を一定期間超え続けると、その後に暴落がやってくるというのが、これまでの経験だ。ITバブルのときは79カ月、リーマンショックのときは52カ月で暴落がやってきた。今年の3月、株価が急落したとき、私はバブル崩壊が始まったと思った。米国株で言うと、3月の時点でシラーPER25倍超えが、70カ月続いていたからだ。

しかし、私の判断は間違っていた。3月末に25倍まで下がったシラーPERは、再び上昇を始め、10月末で32倍となった。つまり3月の株価下落は一時的調整で、バブルは継続したのだ。その継続期間は、11月末で78カ月に達する。ITバブルの持続期間と並んだのだから、私はバブルの「満期」が近づいていると思う。

だから、株式投資はバブルが弾けて、割安で買えるようになってからでよい。一歩引くのも重要な投資戦略だ。ただ、どうしても投資をしたい人には、株価が下落すると価格が上がる日経インバースという投資信託もある。ただし、買うのは株価の下落トレンドが明確になってからだ。

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