関節軟骨は関節の向き合う骨の表面にあり、関節が滑らかに動けるように、さらに体重を受け止めるクッションの役目もする組織です。軟骨と書きますが、やわらかい骨ではなく、骨とはまったく異なる組織です。この関節軟骨同士の摩擦係数は、アイススケート靴の刃と氷の間の摩擦係数より数十分の1と少なく、スケートよりも、はるかによく滑ります。なぜそれほど摩擦が少ないのかは、まだよく分かっていません。少しだけ存在する関節液が、この滑りのよさに関与していることだけは分かっています。また、軟骨はやわらかいクッションの役目を果たしており、歩く時、走る時、飛び降りた時などに、骨や脊椎や頭に受ける衝撃をやさしく受け止め、吸収してくれます。
関節軟骨にとっては適度な運動を行うのが大事
体の各組織には血管が内部を走り、酸素や栄養物質を供給していますが、軟骨の中には血管がありません。そのため、関節を包む関節包の内面の滑膜組織から、関節液に酸素や栄養物質がしみ出します。さらに、関節がポンプのように動き、関節液から関節軟骨に酸素や栄養物質がしみ込んでいきます。関節をギプスなどで長期固定するとポンプ作用ができなくなり、関節軟骨が萎縮してきます。関節軟骨にとっては適度な運動を行うのが大事です。ちなみに、椎間板ヘルニアで有名な脊椎骨の間にある椎間板も軟骨の一種であり、また骨折の治療の過程で「仮骨」という軟骨ができますが、関節の軟骨とは種類が異なります。
監修/井尻慎一郎先生
井尻整形外科院長。医学博士。著書・監修書に『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』(創元社)、『筋肉のからくり 動かし方を変えるだけでコリと激痛が消える!』(宝島社)などがあるほか、論文、講演、テレビ出演などで活躍中。井尻整形外科HPは下記。
https://ijiri.jp
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