蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~「北京オリンピック」を見て感じたこと

2月20日に閉幕した北京冬季オリンピック。開催前はあまり報道もされなくて、注目度も高まっていない印象だったけど、いざ始まってみたらどの競技も面白い。スキージャンプも、フィギュアスケートも予想外のドラマが巻き起こって、思わず夢中になってしまったよ。


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テレビ中継を見ていて思ったけど、選手たちのルックスのレベルが上がっているよね。コスチュームやメークもよくなっているんだろうけど、モデルみたいな選手が増えていて、より華やかな印象を受けた。それにスポーツ競技というのは現代の映像コンテンツとして優れているということを再確認したよ。


昔は、スポーツといえば健康のためにやるものだったり、もっといえば軍隊的な鍛錬の一環として、国力増強が目的だったこともあった。でも、今やアマチュア競技でもエンターテインメント化しているし、大きなビジネスになっている。21世紀で飛躍的に伸びた産業といえば「スポーツ」とされる日も近いと思うよ。


それだけに、今回のオリンピックに賭ける中国側の思惑は大きい。開催前にアメリカをはじめとする国が、中国の人権的配慮に抗議する意味を込めて「外交的ボイコット」を宣言したけど、そのマイナスイメージを打破しようという戦略を随所に感じる。


特に開会式。シンプルな演出だったけど、驚きに満ちていて、俺は東京オリンピックの開会式よりもよかったと感じたんだけど、不自然だったのは、どのカメラに映る人も同じように歯を出して笑ってるんだよ。本当に心の底から笑っているのか、たまたまそういう場面だけを映していたのかは分からないけど、ちょっとわざとらしいし、逆に怖い。張り付いた笑顔のウラに、何か隠さないといけないものがあるんじゃないかと勘ぐってしまうね。

オリンピックの政治的利用は当然のこと

去年の東京オリンピック開会式で俺が唯一感動したのは、長嶋茂雄さんが松井秀喜選手に寄り添われて、王貞治さんと聖火ランナーを務めたシーンなんだけど、あれは日本人向けで世界には全く伝わらなかったと思う。もちろん、今回の北京オリンピックにも内向きの演出や人選はあったと思うけど、より世界に向けて発信しているなと感じた。

やっぱりオリンピックというのは国をアピールするチャンスで、習近平さんはその辺りのことをよく分かってると思う。そういう意味では日本は律義というか、東京オリンピックをあまり政治的、外交的に使わなかった感がある。


オリンピックに政治を持ち込むのはナンセンスというのは表向きであって、どの国も政治利用しか考えてない。中国側はこのオリンピックをなんとしても成功させて、クリーンなイメージを広めようとしている。


欧米諸国が、そんな中国の横暴をとがめて外交的ボイコットをするというのは、一見スジが通ってるように感じるけど、オリンピックを政治的に利用していることには変わりがない。


そんな背景があるせいか、今回のオリンピック報道に関しては、日本のマスコミは少し腰が引けてるというか、あまり突っ込んだ感じがしないんだよね。日本は、どちらかというとアメリカ寄りになってしまうのは仕方がないのかもしれないけど、その影響は大きいと思うよ。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。