大手信用調査会社『東京商工リサーチ』の調査データによると、2021年における「喫茶店」の休廃業、解散が初めて100件(前年比26.5%増)に達し、過去最多を記録した。この数字は調査を開始した2000年以降、最も多かった18年の84件を大幅に上回る。
経営コンサルタントが、その背景を解説する。
「休廃業が増加した大きな原因は、コロナ禍で人々の生活様式が変化したことにある。商談や時間調整、仲間とのたわいもない談話、さらには勉強や(職場以外のいろいろな場所で仕事をする)ノマドなどの機会が、ことごとく奪われたのです」
中小の喫茶店は資金繰りに追われ、自力で対策を打つことができない。明るい展望が見えず、債務超過に転落する前に廃業を決断したとみられる。
また、大手喫茶チェーンや「コンビニコーヒー」との競争で疲弊する中、最後のダメ押しとなったのが昨今の輸入コーヒー豆の高騰だ。泣き面に蜂ではないが、なぜこのタイミングでコーヒー豆が急騰したのか。
「世界最大のコーヒー生産国であるブラジルの大幅な減産予測と、米国や欧州の経済活動再開に伴うコーヒー消費量の増加予測で、昨年のコーヒー豆価格は前年比2倍、3倍まで上昇しました。ブラジルは20年11月から100年ぶりとも言われる降雨不足に見舞われた上、寒波による霜害の影響でコーヒーの木や実が大きなダメージを受けました」(大手商社の関係者)
オミクロン株の感染拡大により、1月に入って全国各地で「まん延防止等重点措置」が適用された。それとともにテレワークが増加し、喫茶店の需要回復は期待できそうもない。
大手喫茶チェーンも赤字で店舗閉鎖…
21年における喫茶店の倒産は61件(前年比8.9%減)だが、これはコロナ関連の休業補償金や持続化給付金などの支援によるところが大きい。休廃業と倒産の合計は161件で、過去最多の20年(146件)を上回った。つまり22年は休廃業だけでなく、息切れによる倒産増の可能性も高まっている。
しかし、中小の喫茶店だけが苦境に立たされているわけではない。テレワークの浸透や大規模イベントの開催中止が続き、大手喫茶チェーンも深刻な打撃を受けている。
コーヒー業界の関係者が言う。
「確かに大手チェーンも大半は苦戦している。だが、中には逆境にもめげず売り上げを伸ばした企業も出るなど、業績の二極化が進行しています」
『ドトール・コーヒー』などを運営するドトール・日レスホールディングス(東京都渋谷区)は、21年3月~11月の連結営業利益が9億2100万円の赤字に転落。『サンマルクカフェ』などを運営するサンマルクホールディングス(岡山県岡山市)は、21年4月~9月の連結営業利益が27億900万円の赤字だった。
また、『喫茶室ルノアール』などを運営する銀座ルノアール(東京都中野区)は、21年4月~9月の連結営業利益が6億6400万円の赤字。時短営業やテレワークなどで来店客が減少し、店舗閉鎖などコスト削減を進めている。
大手喫茶チェーンが赤字を余儀なくされた原因について、前出の経営コンサルタントが分析する。
「大手チェーンの場合、これまで都会のオフィス街や駅周辺を中心に店舗展開をしてきました。ところが、コロナ禍でテレワークや外出自粛が奨励され、稼ぎ頭だった都市部の店舗でまさかの閑古鳥が鳴くようになった。それが大手チェーンの経営を圧迫したのです」
『コメダ珈琲店』独り勝ち!?
しかし、そんな中でも黒字を確保し、まさに「独り勝ち」と呼べる企業がある。お得な「モーニング」や名物の「シロノワール」で有名な『コメダ珈琲店』だ。同チェーンを展開するコメダホールディングス(愛知県名古屋市)は、21年3月~11月の連結営業利益が58億4700万円(前年同期比36.8%増)だった。
「1968年に名古屋の一喫茶店から出発したコメダは、創業時からの原点である『くつろぎ』を重視し、店内は広々とした設計。もともと郊外指向なので、広い駐車場も完備している。ソーシャルディスタンスが求められる中、新たな顧客を呼び寄せました」(同)
また、コメダはコロナ以前から時流に乗ったセルフサービスカフェとは一線を画し、大きくターゲット層を変えていた。
「高齢者、主婦層向けのカフェが手薄なことに気づき、例えばセルフではなくスタッフが飲食物を運ぶなど、都市型カフェの〝逆張り〟で大成功しました。コーヒー1杯はセルフよりやや高いが、何時間いてもノープロブレムの雰囲気。各社のスポーツ新聞が置いてある店舗も多い」(同)
前出のコーヒー業界関係者が言う。
「コロナ禍で喫茶市場はパワーダウンしつつあるが、待ちの姿勢や効率だけでは生き残れない。コメダのように新ターゲットを求めるなど、戦略的な攻めの経営姿勢がますます求められる時代です」
先行き不透明な中で、喫茶業界は正念場を迎えつつある。
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