蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~便利な機能は使う側の進化が必要

高齢ドライバーによる自動車事故が多発している。本人が大丈夫と思っていても、年齢を重ねると反応は鈍くなるし、さまざまな感覚も衰えてくるから、事故を起こしやすくなってしまうというのはあると思う。


後期高齢者になったら免許は返納するという流れも進んでいるけど、地方では車がないと生活できないという現実があるし、そう簡単にはいかないんだよね。


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そういった技術的な面をカバーするという意味でも、クルマの安全装置や自動運転技術は日進月歩で進化している。


俺は今、トヨタ車に乗っているんだけど、高速道路だと本当に手放しでもいいくらいの自動運転ができる領域まできている。5年前のクルマとはもう雲泥の差というか、レベルが違うね。以前は、高速の合流地点でセンターラインが途切れたりすると反応しなくなることがあったけど、今はスムーズに運転してくれるよ。


自動ブレーキ機能も進化している。前はセンサーが敏感すぎて、なんでもすぐ反応して急停車することがあったけど、これもかなり精度が高くなった。


ただ、こうした最新の安全機能を高齢者が使いこなせるかといったら、難しいと思う。新車を買う時には安全性能が高いとか、最新の自動運転機能が装備されているクルマを選ぶと思うんだけど、結局使いこなせない。これは仕方ない部分もある。だって「スマホと連動します」とか言われても、そもそもスマホを使いこなせてないんだから。


なので、これは最初にちゃんと教習をするべきだね。自動運転のクルマに乗るなら、自動運転の教習を受ける。ただ、技術は進化しているのに使う人たちがついていけないというのは、今の社会でよくあるんだよね。

売る側の責任もあると思う

俺が啓蒙活動をしているAEDも、人の命を救う医療機器ということは伝わっていて、今や街中に配置されてはいるけど、使い方が分からないという人が多い。

それと、東京ガスの人に聞いたんだけど、最近のガスメーターは大きな地震を感知すると自動的に栓を止める機能がついている。でも、それを知らない人が、地震が来たからガスの元栓を閉めないと…と、やってるうちに逃げ遅れてしまうことがあるそうだ。


要するに、いくら便利な機能ができても、使う側が進化しないとダメなんだよ。


ただ、これは売る側の責任もあると思う。クルマのメーカーは、さまざまな新機能をウリにしてるんだから、使い方の教習をセットにするべき。もう教習をやってからじゃないと販売しません、くらいでもいいよ。


それと、自動運転をしているクルマは周囲からも分かるようにしてほしいよね。自動運転モードになったら、クルマの周囲がピカピカ光るとかあれば伝わりやすい。


あと、高齢者が運転してるクルマからは電波を出すというのはどうかな。高齢者が運転する印として、もみじマークや四つ葉マークがあるけど、ちょっと分かりにくい。今の技術なら高齢者がハンドルを握ったらセンサーで感知して電波を出すことができるはず。他のクルマは、それを自動で受信して分かるようにすれば「前のクルマが電波出してるから、いつもより車間距離を空けとこう」とか、対処ができるじゃない。誰もが簡単に使えるのが、本当の技術革新だと思うよ。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。