中国・習近平“失脚”の可能性…五輪後のコロナ再感染爆発と大恐慌
北京冬季五輪が開幕した。中国の習近平国家主席にとっては単なるスポーツの祭典ではなく、大国としての存在感を海外に発信するとともに、自身の権力基盤を固める重大なイベントだ。万難を排して大会に臨んだ中国だが、国内外に蓄積した数々の矛盾やゆがみは爆発寸前。
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五輪後に一気に噴出すれば、習氏による超長期政権のシナリオが崩壊する可能性もある。
夏と冬の五輪を同一都市で開催するのは史上初めてだが、北京市周辺はこの冬の降雪量が少ないこともあり、大会組織委員会は100基を超える人工造雪機と300基以上の人工降雪機を配置した。90%以上が人工雪というのも史上初となる。かなり強引に北京で大会を開いたように見えるが、そこには大きな意味がある。
2008年の北京夏季五輪の開幕を高らかに宣言したのは胡錦濤国家主席。習氏は当時、副主席だった。習氏が主席に就任した後の15年に、冬季五輪の北京招致が決まった。
「習氏は国家主席として自らの権威を誇示するために、オリンピックを首都北京で開くことに並々ならぬこだわりがあった」(北京外交筋)
ただ、習政権の思惑は大きく狂った。中国武漢市で19年に確認された新型コロナウイルスは、2年以上たっても収まらず、世界中がコロナ禍にさらされている。北京でも厳重なバブル方式で感染の封じ込めを図ったが、連日、陽性者は止まらない。
中国当局は、感染者が多発した都市を封鎖するなど、先進国と一線を画した強権的なコロナ対策を続けてきた。しかし、重大なアキレス腱となりそうなのが、ワクチンの問題だ。
中国製ワクチンの効果に疑問!?
欧米の先進国や日本では、米ファイザー社や米モデルナ社が開発したワクチンが多く使われており、重症化を抑制する効果が裏付けられている。しかし、中国では自国製ワクチンが主に使われており、オミクロン株など変異株への効果が、ファイザーやモデルナ製に劣るとみられている。今後、欧米や日本でコロナが収まり、国境を越えた人々の往来が活発になったとき、中国で感染爆発が起こってもおかしくない。
中国の「ゼロコロナ」政策で人の移動が制限されていることは、消費や生産など経済の足かせにもなっている。21年10月~12月期のGDP(国内総生産)成長率は、前年同期比4.0%増と7月~9月期の4.9%増から鈍化した。
積極的な不動産投資が逆回転し始め、中国は今まさにバブル崩壊に直面している。不動産大手の『中国恒大集団』は経営危機に陥ったが、瀕死状態となった不動産関連企業はほかにも数多い。不動産は中国経済成長の原動力となってきただけに、経済低迷が長期化する恐れもある。
習政権が「共同富裕」という方針を掲げ、格差解消を打ち出していることも、景気を頭打ちにする要因の1つだといえる。貧富の差を解消すること自体は悪いことではないが、やっているのは事実上の大企業たたきで、『アリババ・グループ』などが標的となった。
北京冬季五輪ではアメリカやイギリスが、人権問題を理由に首脳らを派遣しない「外交的ボイコット」を行った。人権問題は根が深く、習政権に大きな打撃となる可能性がある。
新疆ウイグル自治区でのウイグル族弾圧について、アメリカではウイグル強制労働防止法が成立、6月に施行される。新疆ウイグル自治区で生産された原材料や製品の輸入が原則禁止され、輸入品は企業側が強制労働によるものではないと証明する必要がある。
すでに昨年、アメリカの税関当局がユニクロのシャツの輸入を差し止める事態もあった。衣料品のほか、太陽光パネル関連工場もウイグルに多数あり、強制労働が問題視されている。中国当局は否定しているが、人権問題に関して、欧米諸国がいったん振り上げた拳をすんなり下ろすとは考えにくい。
習近平の野望は毛沢東に匹敵する実績づくり
軍事大国化する中国への包囲網も強まっている。香港の民主主義は習政権によって失われた。五輪後には、台湾への軍事侵攻がクローズアップされてくる。「ロシアのウクライナ侵攻と並んで、台湾が世界の2大火薬庫となっている。バイデン米大統領は、ウクライナに侵攻した場合には、プーチン大統領個人への制裁も示唆している。中国が台湾に侵攻した場合、習主席も同じ責めを受けることになるだろう」(前出・外交筋)
習氏は建国の父、毛沢東以来の存在となることを目指し、「反腐敗闘争」の名の下に政敵を次々と打倒してきた。最大のライバルは元国家主席の江沢民派。中国の女子テニス選手、彭帥への性的暴行が取り沙汰された張高麗元副首相は、江沢民派の大物だ。
現状では盤石に見える習氏は秋にも開かれる中国共産党大会で、2期10年の制限を撤廃した国家主席の3期目続投を正式に決め、終身国家主席への終身統治も視野に入れるとされる。
毛沢東に匹敵する実績づくりとして、五輪の成功はもちろん、台湾統一を成し遂げたいところだが、失敗すれば逆に大きな汚点となる。さらに経済やウイグル問題でも失点すれば、鳴りを潜めている江沢民派らが息を吹き返す可能性もある。
習氏の野望が大きければ大きいほど、高転びするリスクを無視できない。
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