
短期集中連載『色街のいま』第6回「千葉・松戸」~ノンフィクション作家・八木澤高明
都心から20キロ圏内で、東京のベッドタウンとして知られている千葉県松戸市。
最近になって、私はその松戸に「マッドシティー」なる異名があることを知った。風俗店の多さや、物騒な事件が多く起きることから、そう呼ばれるようになったという。
【関連】短期集中連載『色街のいま』第5回「大阪・今里新地」~ノンフィクション作家・八木澤高明 ほか
そう言われてみて、私は過去に何度も松戸に事件や風俗の取材で足を運んでいたことを思い出した。
風俗では15年ほど前、駅の東口に夜な夜な現れるタイ人や中国人の立ちんぼを取材した。事件では、古くなるが、50年ほど前に起きた首都圏連続女性暴行殺人事件の現場を取材し、その舞台の1つが松戸だった。
東京という大都市の周縁部というのは、かつてはお世辞にも治安がいいとは言えなかった。松戸にもそうした雰囲気がかつてはあって、それが「マッドシティー」なる異名の由来となっているのだろう。
松戸の風俗史を振り返ってみると、その歴史は古く、江戸時代にまでさかのぼる。水運を利用して江戸へと運ばれる物資の集積地であったことから人とモノが集まり、平潟遊廓という遊里が形成された。遊廓から色街となって栄え、その隆盛は売春防止法施行まで続いた。その流れを汲んで、現在も多くの風俗店が営業しているのだ。
松戸にはソープランドやピンサロなどの風俗があるが、一番多いのはデリヘルである。生まれては消えるような状態で、正確にはよく分からないが、50軒はくだらないだろう。それでも、一番にぎやかだった10年ほど前からは数を減らしているという。かつて松戸駅東口でデリヘルを経営していた女性が言う。
「東口にハンバーガーショップがあって、そこから左に入った通りに風俗店がたくさんあったんです。客引きも多くて、通りの奥にあるホテルに向かうお客さんを捕まえていました。予約していたのにホテルまで来られないお客さんが、何人もいたんです。お客さんから予約の電話が入ると、『絶対に客引きについて行っちゃダメですよ』と言い含めたほどでした。ロシア、タイ、フィリピンといった立ちんぼの女の子も多くて、盛り上がりはすごかったですね」
彼女が、かつて店を出していたという通りを歩いてみた。そこはかつて、私が立ちんぼたちの取材で訪ねた場所でもあった。
見たところ、風俗店と思しき店やラブホテルはあるが、人通りはまばらだった。松戸の風俗の中心は、やはりデリヘルなのだろう。
客のプレイ内容にも変化が…
一昨年からのコロナの影響は、どのように出ているのだろうか。松戸のデリヘルに在籍している明日香という名の女性に話を聞いた。「去年の5月ぐらいから働き始めたのでコロナ前の状況は分かりませんが、お客さんは1日に1人か2人という感じでした。1人あたり9000円ぐらいが私の取り分なので、1日2万円いかないぐらい。なので、良くはないですよね。お店のスタッフから、『年末になれば盛り返せる』と言われていたので、それを励みに頑張っていました」
そして昨年10月に緊急事態宣言が解除されると、状況は好転したという。
「それまで途絶えていたお客さんから電話がかかってくるようになったり、急に電話が鳴るようになりました。年末もそうでしたが、すごく忙しかったのは12月10日過ぎ。ボーナスが出た直後で、みんな遊びたかったんでしょう。コロナが落ち着いているうちに遊ぼうという感じでした」
緊急事態宣言が明けてから、客のプレイ内容にも変化があったという。
「なんだか、がっついたお客さんが多くなったなと思いました。もともと松戸は、職人さんや若いサラリーマンが多くて、元気な人ばかりなんです。それが、1時間で何回抜けるかみたいな感じで…。コロナで抑えていたものが一気に爆発したんですかね」
明日香にしてみれば、しつこい客は増えたが、収入は安定した。ところが、年明けからのオミクロン株の流行で、これまでの流れが一変したという。
「1月10日過ぎからですかね。今度はまったく電話が鳴らなくなりました。壊れているのかと思ったほどで、たまにかかってくるのはキャンセルの電話ぐらいで本当に困っています」
オミクロン株の流行は、またしても風俗業界に暗い影を落とし始めた。そんな中、この松戸で新しい傾向が見られるという。
「ラブホテルが中国人の経営になって、そこと連携した中国人の女性が多くお客さんを取っています。出会い系とかにも進出していて、日本人かと思ったら中国人が来たという話を聞くようになりました。デリヘルを経営している中国人男性を知っていますが、何度捕まっても、へこたれずに再開しているんです」
日本の風俗業界には以前から多くの中国人が参入しているが、このコロナ禍により、その動きはさらに加速していくのだろうか。コロナの流行は日本の風俗業界にとって、大きな転換点となっているようだ。
八木澤高明(やぎさわ・たかあき) 神奈川県横浜市出身。写真週刊誌勤務を経てフリーに。『マオキッズ毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回 小学館ノンフィクション大賞の優秀賞を受賞。著書多数。
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