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北朝鮮VS日米韓!ミサイル乱射で“偶発的開戦”が危険水域に…

(画像)Marko Aliaksandr / shutterstock

北朝鮮が1月30日午前7時52分ごろ、2017年以来となる中距離弾道ミサイル(IRBM)『火星12』の発射実験を実施した。同ミサイルは最大射程が約5000キロで米領グアムを攻撃可能とされ、米国との緊張がさらに高まりそうだ。

北朝鮮は今年に入り、相次いで短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルの試射を実施しており、1月19日に開かれた朝鮮労働党会議では、18年4月に凍結を表明していた核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射再開を示唆していた。

「今後迎える金正日総書記の生誕80周年(2月16日、光明星節)と、金日成主席の生誕110周年(4月15日、太陽節)には、さらに挑発的な試射を行う可能性もあり、注視していかなければなりません」(北朝鮮ウオッチャー)

1月25日に開催されたジュネーブ軍縮会議では、北朝鮮の代表部大使が「戦争抑制力は、特定の国家や勢力を狙ったものではなく、戦争を防止し、国権を守護するための正当防衛の抑制力である」と演説した。

北朝鮮はかねがね「韓国のミサイル発射は防衛で、なぜ自国のそれは挑発なのか」と、米韓の〝二重基準〟を問題視しており、これを復唱した内容だ。

朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』は28日、金正恩総書記が核・ミサイル関連の軍需工場で現地指導を行ったと、場所と時期を発表せずに報じた。これには対米、対南(韓国)外交担当である実妹の金与正党副部長が同行しており、今後の北朝鮮の動向を探る上でも注目に値する。

“恫喝外交”が可能な水準にほぼ到達

北朝鮮は17年11月29日、米本土に到達可能な新型ICBM『火星15』の発射を成功させたとする政府声明を発表。国営の『朝鮮中央テレビ』は「ついに国の核武力の完成という歴史的な大業、ロケット大国建設の偉業が実現したと、(正恩氏が)誇り高く宣言した」と報じている。

「米国の専門家は、核弾頭製造に必要な50キロ前後のプルトニウムと500キロ前後の濃縮ウランを保有していると推定しており、数十個の核弾頭を製造できると見積もっている。また、最近発射した極超音速ミサイルに核が搭載されれば、日韓は事実上、防御が困難になります」(軍事アナリスト)

北朝鮮はすでに敵対国への核攻撃を現実化させつつあり、恫喝外交が可能な水準にほぼ到達した。よって15年に米韓がまとめた北朝鮮に対する「米韓作戦計画5015」は、大幅な補完を迫られている。

しかし、その一方で北朝鮮国内には、きな臭い空気が一段と漂い始めたようだ。

「北朝鮮は厳しさを増す米バイデン政権の経済制裁と、新型コロナウイルス流入防止のための国境封鎖により、昨年の貿易額が推定で3.2億ドルまで落ち込んだ。これは過去最低を記録した14年の76.1億ドルの約24分の1であるため、北朝鮮のミサイルによる挑発は、米国の対北朝鮮制裁を緩和させるための〝瀬戸際作戦〟でもあります」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

また、北朝鮮の国境沿いの地域には、あの手この手で監視の目を避け、中国や韓国と携帯電話を使ってやり取りしようとする人々が存在するため、その取り締まりが理不尽なまでに強化されている。

「携帯電話は商売に欠かせず、規制強化には不満の声が上がっています。当局は住民の動向を徹底的に監視、弾圧しており、この状況が続けば不満が爆発することにもなりかねない。まだ小競り合い程度ですが、大規模な暴動に発展する恐れがあります」(同)

インド・太平洋地域に米空母が集結

北朝鮮では国内を統制する必要性から、ミサイル発射実験の成功といったニュースは、正恩氏の権力基盤を強化するためのプロパガンダとして利用されている。その証拠に1月12日付の『労働新聞』は、正恩氏の立ち会いのもと極超音速ミサイルの発射実験が成功したと、何枚もの写真を使って1面で大々的に報じた。

このような度重なる挑発行動に、米軍事専門メディアの『米海軍研究所(USNI)ニュース』は18日、西部太平洋に3個空母打撃群(CSG)、1個遠征打撃群(ESG)、1個両用即応群(ARG)が配置されていると伝えた。

「当時、横須賀に配備されている空母『ロナルド・レーガン』は整備中でしたが、空母『カール・ビンソン』はフィリピン海で確認され、そこから遠くないところにESG旗艦の『アメリカ』と『エセックス』という、他国の軽空母より大きい強襲揚陸艦が布陣していた。10日に母港サンディエゴを出港した空母『エイブラハム・リンカーン』は、日本近海を航海中でした」(軍事ジャーナリスト)

このように空母3隻と強襲揚陸艦2隻が、同時期にインド・太平洋地域に集結したのは異例のことで、明らかに北朝鮮をけん制することが目的だった。

いまや北朝鮮と米韓軍は、偶発的開戦のリスクに直面している。そのきっかけは核・ミサイル発射に限らず、軍事境界線(38度線)付近での衝突や、韓国哨戒艦「天安」沈没事件(10年3月)、延坪島砲撃事件(10年11月)などのように、海洋における衝突の可能性もある。

現在、東アジアは94年、03年、17年の核・ミサイル危機に続き、より深刻な第4次危機の様相を呈している。好むと好まざるとにかかわらず、日本も遠くない将来、身構える必要に迫られる日が来る。

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