みずほ銀行“人災”でトラブル連発…システム障害の闇~企業経済深層レポート
年明け早々、みずほ銀行でまたしてもシステム障害が発生した。これで1年間に10回もトラブルを起こしたことになり、利用者からは不安の声が上がっている。
「1月11日、法人向けインターネットバンキングのサイトで、朝一番のサービス開始からログインしにくい状態になりました。3時間半ほどで復旧しましたが、ため息をついた方も多いでしょう」(金融関係者)
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みずほの相次ぐトラブルに鈴木俊一金融担当大臣は、異例の談話を発表した。
「銀行というのは社会の重要なインフラで、システム障害が発生することは極めて遺憾。再発防止に向けてしっかりとやってもらうことが重要だ」
最初のシステム障害は昨年2月に起きた。データベース管理システムがダウンし、みずほ全体の約8割に相当する4318台のATM(現金自動預払機)が一時停止。そのため、顧客のキャッシュカードや通帳などがATMに吸い込まれ、大パニックとなった。
以降、みずほはシステム障害を連発し、昨年11月に金融庁から業務改善命令、財務省から外為法に基づく是正措置命令を受けている。
また、年始のトラブルは、親会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)が責任を取り、引責辞任した坂井辰史社長の後任に、木原正裕執行役(当時)を昇格させる方針を固めたばかりのタイミングで発生した。
「みずほはもはや銀行の体をなしていないと、政財界から大ブーイングを浴びている。みずほ側は世代交代による企業風土の刷新をアピールするため、平成入行の木原氏を新社長に抜擢しました」(経済アナリスト)
合併初日から呪われていた!?
木原氏は岸田文雄首相の最側近として知られる木原誠二官房副長官の実兄ということもあり、政権や金融当局への対応の円滑化を図った人事との見方もある。しかし、今後もシステム障害が続くようだと、永田町を巻き込みさらなる騒動になるかもしれない。そもそも同行のシステム障害は、昨年から今年にかけての問題ではない。みずほOBの1人は「相次ぐトラブルは合併時に生じた人災だ」と断罪する。数々の弊害が積み重なって、今日のトラブル連発に至っているというのだ。
「現在のみずほは、かつての富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行の3行が、2002年に合併して誕生しました。ところが、記念すべき4月1日のスタートからATMが故障し、二重引き落としや給与振り込みの遅れ、誤送金などが相次いだ。トラブル総数は250万件に上ったのです」(みずほ銀行OB)
いま思えば最初から呪われていたかのようだが、なぜ、このようなトラブルが発生したのか。金融機関のシステムに詳しいエンジニアが指摘する。
「通常、銀行合併の際はシステムを一本化し、すべてを動かす。例えば、三菱UFJ銀行は日本IBM、三井住友銀行はNECに開発や運用を委ねました。ところが、みずほは合併前、富士が日本IBM、第一勧業が富士通、興銀が日立製作所のシステムを採用しており、合併後もそれぞれのシステムを併走させた。それがシステム障害を引き起こす元凶なのです」
なぜシステムを一本化できなかったのか…
3行の顔を立てた中途半端なシステム統合は、02年4月に続き、11年3月に大規模なシステム障害を引き起こした。その後、追い詰められたみずほは、約4500億円を投じて新基幹システム「MINORI」を構築し、19年7月に全面稼働させている。「だが、ここでもみずほは富士通、日本IBM、日立製作所に、新たにNTTデータを加え、複数システムの抱き合わせ方式をとった。このシステムは以前より複雑な構造になったうえ、いつトラブルを起こすか分からないと、稼働当時から言われていました。案の定、大爆発です」(同)
なぜ、みずほはシステムを一本化できなかったのか。先のみずほOBが明かす。
「合併した旧3行が互いに譲らず、人事をはじめ激しい縄張り争いを繰り広げてきました。それがシステム構築でも展開された結果、爆弾を抱えた〝化け物システム〟が生まれてしまったのです」
みずほの将来について、前出の金融庁関係者が言う。
「メガバンクのシステム障害は、国際的にも日本の信用を損なうことになる。正常に戻すには一から新しい銀行にするしかないという声が、永田町から聞こえてきます」
前出の経済アナリストが続ける。
「実は昨年、みずほの解体論があちこちでささやかれていました。みずほの一般向けリテール部門はりそな銀行、投資家向けは新生銀行にという話が流れたのですが、その後、新生銀行がSBIホールディングスの連結子会社になったことで、話は立ち消えました」
しかし、年始早々のシステム障害と新社長就任で、みずほ周辺が再びきな臭くなってきたともっぱらだ。みずほの解体、合併を巡る小さな炎は、トラブルが続けばこれまで以上に大きく燃え盛るだろう。
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