『秘闘 私の「コロナ戦争」全記録』新潮社/1760円
岡田晴恵(おかだ・はるえ)
白鷗大学教授。共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所、ドイツマールブルク大学医学部ウイルス学研究所、経団連21世紀政策研究所などを経て、現在は、白鷗大学で教授を務めている。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
――〝コロナの女王〟としてメディアを席巻しました。一部には批判的な意見もありましたが、テレビに出演し続けたのはなぜですか?
岡田 感染症対策は早く強くやって、短く切り上げることが肝心です。それが医療、経済の両方を守ることになります。緊急事態宣言が何度も出される事態を回避するのが、パンデミック対策です。事が起こる前に提言するのは煽りのように聞こえますが、事が起きてから対応する逐次投入の対応では、流行が抑えられず国民生活への打撃が大きくなります。肺炎になっても入院できなかった人のご苦労を思えば、引くわけにはいかなかったということです。
――政府の対策について手厳しいですね。一体何が問題だったのでしょうか。
岡田 初期から検査を絞ったことです。「37.5度以上の発熱が4日以上」というのもありましたね。無症状、軽症者が感染を広めるという性質のウイルスでしたから、検査を増やすことが世界的にはスタンダードだったにもかかわらず。仕方なく、国民は有料検査所で受けていました。ようやく今、無償で検査できるようになりましたが、足りません。今、第6波では検査も医療もアクセスしにくくなっています。これは、日本の国民皆保険が崩れてきたということです。発熱などの患者数が増大する2月をどう乗り切るか。
あと2、3年はかかるでしょうね…
――オミクロン株が猛威を振るっています。対策はあるのでしょうか?
岡田 感染力が強くワクチン免疫を逃避するので2月は流行するでしょう。尾身茂先生ら専門家有志は、若年層は「受診せずに療養を」と提言し、現実的には自宅療養とならざるを得ない方が多いでしょう。発熱、せきなどのつらい症状があったり、他の病気が悪化したり、医療を必要とする人も多く出てくると思いますが、自分で自宅療養の準備をしないといけない状況になっています。持薬のある方は多めにもらっておく。生活必需品なども多めに買っておくといいでしょう。
――本書ではコロナ以前の世界には戻れないのかというやり取りも出てきます。
岡田 オミクロンが最後の変異ウイルスになるとは明言できません。世界的には、ワクチンの行き渡ってない国でも流行していて、変異ウイルスがそこからまた出てくる可能性はあります。グローバル化した現代社会では、パンデミックを封じ込めるには先進国だけではすみません。あと2、3年はかかるでしょうね。ですから、自国で検査、医療、ワクチンと薬の製造体制などを整えていかないといけません。
(聞き手/程原ケン)
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