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『ヌマガレイ』青森県/堤川河口産〜日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

長く各地を釣り歩いていると〝ものすごく肌が合う釣り場〟に出合うことがあります。ポイントや釣果もさることながら、その釣り場の雰囲気や、周囲の街並みなどもひっくるめて、ものすごく惹かれて帰りたくなくなってしまう、そしてまたすぐにでも訪れたくなる…。

青森県は青森市内にある堤川河口もそういった釣り場の1つです(厳寒期の夜釣り限定)。雪降る北国の夜の歓楽街。その脇を静かに流れる堤川(わりとドブ)。そして、ほぼ確実に好釣果が望めるヌマガレイ。すべてがワタクシの好みにマッチしており、毎年この時期になると行きたくなってしまいます。

さて、この連載でも書かせていただいているとおり、須磨海岸(兵庫)、女川港(宮城)とカレイを狙って連敗続きのワタクシとしては、もうこうなったら堤川に癒やしてもらうしかねぇ…。ということで、冬の津軽へ向かうことにしました。

上野発の夜行列車なき現在でも、東北新幹線を降りた時から新青森駅は雪の中、というのは昔から変わらずです。もっとも、この時期のカレイは夜が狙い目。日中はほとんど釣れないことも多く、夜行列車で朝の到着となるとほぼ釣りにならないんですな。まだ夜行列車が健在の頃、上野発の夜行列車で早朝に到着後、雪の中を夕方までやってボウズの憂き目に遭ったことが数回あり、今となっては懐かしい思い出です。

あれだけ苦戦していたカレイが!

新青森駅からは、雪の中を車でソロソロと走り20分ほどで市内中心部へ。釣り場近くの銭湯〝トド湯〟に立ち寄り、十分に身体を温めてから釣り場に向かいます。堤川の河口に面した堤川緑地公園に着いてみると、雪に埋もれた夜の公園に他の釣り人の姿はなく、足跡が全くない深く積もった雪の中を、太股までハマりながら川べりまで歩きます。まずは釣り座を確保すべく周辺を歩き回って、雪を踏み固めてから仕掛けを準備。エサを付けて投げ入れたら竿を雪に突き刺して、あとはカレイからのアタリを待つばかりです。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

煌々と明かりが灯る一面深い雪の公園は、まるで誰もいないスキー場で釣りをしているような爽快感です。と、早くも一本の竿が激しく震えました。竿を手にすると力強い手応えで釣れたのは35センチほどのヌマガレイです。

ヌマガレイ
ヌマガレイ (C)週刊実話Web

魚をハリから外して血抜きを施し、エサを付け替え再投入。竿を雪に突き刺していると、隣の竿がズズッと傾きました。すぐに竿を取って巻き上げにかかると今以上の重量感で、ヘッドライトで照らした水面下に2つの茶色い背中が見えました。結構な重たさですが「えいやっ!」と抜き上げて無事確保。35センチ&30センチ級の一荷(2本バリに2尾)です。開始からほどなくで3尾のカレイをキャッチ。あれだけ苦戦していたカレイですが、まさに〝所変われば~〟というヤツですな。

その後も順調にヌマガレイを追加し、「もうこれ以上釣っても食べきれないしなぁ…」などとぜいたくな事を考えていると、1本の竿がバタンッと雪上に倒れました。時折、流下してくる氷の塊が掛かるとこうなるので、取りあえず竿を手にして巻き上げにかかります。ん? クソ重たいなかにも何かヒキを感じるような…。さらに巻いて寄せてくると水面下に見えたのは、50センチはあろうかという座布団のようなヌマガレイの白い腹です。あわわ…玉網は持ってきていないし、どうしよう…。

新たに発生したリベンジ案件

おとなしくなった頃合いを見計らい、イチかバチか「えいやっ!」と抜き上げ、魚が水面から上がった瞬間にブチッ!! 道糸から切れて魚は水の中へ…。しばし雪の上で放心です。デカかった…。

ちょっと立ち直るのに時間がかかりましたが、まあ食べるには十分釣れたし、カレイリベンジも果たせたし、と自分を納得させて竿を納めることにしました。

今回は数が釣れたので、刺身、焼物、煮付け、卵の煮付けで豪勢な晩酌です。カレイの中でも筋肉質なヌマガレイらしいコリコリとした食感の刺身、カレイ特有の風味が香ばしい焼物、そしてクセのない上品な煮付けといずれもおいしく、津軽の銘酒〝田酒〟の進むことといったらありません。

ヌマガレイの刺身、焼物、煮付け、卵の煮付け
ヌマガレイの刺身、焼物、煮付け、卵の煮付け (C)週刊実話Web

そして特筆すべきは、この時期ならではともいえる卵の煮付け。粒子の細かい卵は食感も素晴らしく、今まで食べた魚卵の煮付けのなかでもかなり上位なのでは、というほどの旨さです。

雪の北国のお気に入りの釣り場で、大好きなヌマガレイ釣りを満喫できて大満足。と言いたいところではありますが、あの座布団のような白い腹が目に焼き付いて離れず、これはこれで来年またリベンジせねばと誓ったのでありました。チキショー!

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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