社会

岸田首相“聞く力”に具体策なし…公明党と「参院選協力」で深まる溝

岸田文雄 (C)週刊実話Web

オミクロン株が全国で猛威を振るう中、岸田政権は有効な対策を打ち出せておらず、崖っぷちに追い詰められつつある。一方、オミクロン株をよそに自民党議員を不安に陥れているのが、連立政権を組む公明党との深まる溝だ。

まずは公明党関係者が不信感をぶちまける。

「自民党が従来の約束に疑問符をつけた。ケンカを売ってきたのは自民党側だ」

コトの発端は長年、自公が選挙で助け合ってきた相互推薦。先の公明党関係者によれば、自公は2016年の参院選から互いの候補者に推薦を出してきた。つまり、参院選では政権維持に最重要視される「1人区」で公明党は候補者を立てず自民党候補者を推薦、自公VS野党という構図を作り、自民党候補の得票数に貢献してきた。

1人区は全国に32あり、前回の参院選(19年)は自民党が22勝と圧勝し、政権維持の原動力となった。改選数が3議席以上の埼玉、神奈川など5つの選挙区では、自民党が公明党の候補者を推薦し、自公双方の候補者を当選に導いた。

「相互推薦は選挙前の話し合いで合意する。19年の参院選では、前年の12月には選挙協力が整った。ところが、今回の参院選では1月末になっても合意に達していない。自民党が動かないからです」(同)

日本維新の猛威に自民多数落選か?

公明党の山口那津男代表は1月17日の会見で、こう不満をにじませた。

「早くから自民党に(選挙協力を)呼びかけている。公明党としてやらなければならないことをやっていく」

公明党の支持母体である創価学会に至っては1月27日、「人物本位、党派を問わず見極める」という異例の表明に踏み切ったほど。

公明党、創価学会が自民党をここまでけん制する参院選の背景について、選挙アナリストが解説する。

「日本維新の会の猛威に怯える自民党兵庫県連の反乱が大きい」

伏線には前回の参院選がある。定数3の兵庫選挙区は1位日本維新の会・清水貴之氏57万3427票(当選)、2位公明党・高橋光男氏50万3790票(当選)、3位自民党・加田裕之氏46万6161票(当選)、4位立憲民主党候補で43万4846票(落選)、5位共産党候補の16万6183票と続いた。

「3位の自民党候補は、次点の立憲に3万票差まで追い上げられた。しかも、この選挙中、当時の安倍首相と二階幹事長が公明党の候補者応援のため、現地でマイクを握った。自民党から大量に公明党へ票が流れたといわれている」(同)

今夏の参院選の兵庫選挙区で改選となる自民党候補は末松信介文科相。6年前の参院選では末松氏がトップ当選、2位は自民党推薦の公明党・伊藤孝江氏、3位は日本維新の会・片山大介氏だった。

「維新は昨年10月末の衆院選で、大阪だけではなく兵庫でも大躍進した。次の参院選で大幅な票の上積みは確実です」(同)

前回の参院選票を参考にすると、日本維新の会の勢い、立憲民主党と共産党の候補者1本化で、今夏の参院選は自民党候補が落選する可能性があるのだ。

「この情勢に自民党兵庫県連からは相互推薦で公明党に票が流れるのを止めないと、自民党候補が落選するという意見が強く出た。〝ストップ自公相互推薦〟論です」(政治担当記者)

自民党本部は、兵庫県での情勢を考慮し結論を先送りしたのだ。

岸田首相の“決断力不足”が命取り

「昨年の衆院選、公明党は比例で800万票を目標としたが、結果は700万票台。また、支持母体の創価学会の組織力で戦う公明党は、コロナ禍で会合や集会の開催が難しいため、選挙準備はなるだけ早く進めたい。だから強硬路線に突入しつつある」(自民党関係者)

公明党の陽動作戦に慌てふためいた自民党の遠藤利明選対委員長は、年明け兵庫県連を訪れ直談判。何とか推薦容認を取り付けた。他の埼玉、神奈川でも調整を進めている。

「1人区は1~2万票差で自民党勝利の選挙区が多い。この票差は学会支援票とされるだけに、公明党の全面支援がないと自民党は1人区でボロ負けする。複数区で公明党をしっかりサポートしないと、自民党は政権を失いかねない」(自民党長老)

学会消息筋の話。

「岸田首相の決断力不足が混乱を招いている。安倍元首相や菅前首相はイザというとき、腹を括り街頭などで大々的に応援していただいた。あるいは維新の立候補にクギを刺すなど公明党をフォローする気配りもあった。その信頼関係があったからこそ、自民党候補の応援にも熱が入り、自公政権が成り立った。だが、岸田首相は連立を組む公明党への配慮がいまひとつ足りない。一説では岸田首相は公明党を捨て、維新とタッグを組む肚という情報もある。仮に、従来通りの相互推薦で一件落着したとしても、ここまで関係がこじれれば、創価学会も公明党も疑心暗鬼となって自民党候補者支援に熱が入らないかもしれない。今後は岸田首相自ら〝聞く〟だけでなく、行動で示してほしい」

岸田首相が多用する「丁寧に」「慎重に」「適切に」は、魑魅魍魎が跋扈する政界では通用しない。

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