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蝶野正洋『黒の履歴書』~自分をさらけ出すのが本当のカッコよさ

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

昨年末に脊柱管狭窄症の手術のために入院したことは、この連載でも報告させてもらった。

他のメディアやYouTubeでも術後の経過や、リハビリについて話したりしたんだけど、それを見た友人や、仕事上の付き合いのある方から「実は僕も腰の手術をしたことあるんですよ」とか「長年腰を痛めてて、痛み止め飲んでます」と、声をかけてもらう機会が増えた。

もちろん、励ましや激励もいただいていて、本当にありがたかったんだけど、俺は逆に「この人も今までずっと痛みに耐えてきたんだな」と、見る目が変わった。

プロレスラーは、現役もOBもダメージが蓄積されていて、体のいろいろな部分にガタがきているのが当たり前だけど、一般の人たちもさまざまな持病を抱えていて、それを乗り越えながら毎日を頑張ってるんだなという当たり前のことに改めて気付かされたよ。

少し前まで、俺は杖をついたり、車椅子で移動していることがちょっと恥ずかしいというか、あまり人前で見せたくないと思ってた。でも、あるイベントで一緒になった天龍(源一郎)さんの姿を見て、考え方が変わったんだよね。

そのイベントはゴルフ場で開催されていて、お客さんが見守る中をステージとなるリングまで歩いていくという段取りだった。俺はその時、ちょっと見栄を張って杖1本で出ていったんだけど、天龍さんは2本杖で、かなりゆっくり歩いていた。

お客さんたちは、その姿を最初は冷やかし半分で眺めてんだけど、あまりに一生懸命歩いているから、そのうち声援が飛ぶようになってね。なんか感動的だったし、さすが天龍さんは歩いているだけで観客を引き付けるんだなと感心したよ。

俺も、無理をせずに今の姿を見てもらえばいい。これからリハビリして、正直どこまで回復できるか分からないけど、その過程を包み隠さず見てもらえば「蝶野も頑張ってるな」と思ってもらえるかもしれないからね。

カミさんのことは「神」だと思って崇拝

頑張ってるといえば、これも年末にラジオ番組に出演して、夫婦仲について語ったことについても反響が大きかった。

番組で「これまでの人生で見つけた〝気付き〟」について尋ねられたので、俺は「妥協」と答えたんだよ。夫婦という知らない者同士が一緒にやっていくために一番必要なことは「妥協」すること。そのためには、カミさんのことは文字通り「神」だと思って崇拝するのが一番だという、俺の持論だよ(笑)。

これを聴いた人から「さすが蝶野さん、頑張ってますね」とか、「どうすればそこまでの境地に達することができるんですか」なんて言われたけど、俺もこの結論に行き着いたのが5年前くらい。結婚して25年くらい経ってようやく悟った(笑)。

とはいえ、この「妥協」と「崇拝」は真理だから、結婚している人は早く気付いたほうがいい。

意地張ってカミさんに立ち向かっても、ただの悪あがきでしかない。さっさと全面降伏すれば、無駄な争いがなくなって、人生が充実するはず。

見栄を張らずに、今の自分をさらけ出すのが、本当のカッコよさなんだよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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