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衝撃公判! 被害者が証人出廷…犯行裏側とヒットマン「黙秘」の真意

(C)週刊実話Web

「ケガをさせるために足を狙いました。殺す気はありませんでした」

六代目山口組・大同会(森尾卯太男会長=鳥取)ナンバー4である岸本晃生若頭代行の第一声は、殺意を否認するものだった。池田組・前谷祐一郎若頭と男性幹部への殺人未遂と銃刀法違反の罪に問われた公判が、1月11日から13日まで岡山地裁で開かれたのだ。

地裁には、大同会以外にも、五代目山健組(中田浩司組長=兵庫神戸)の物部浩久若頭や中村啓一若頭補佐など、六代目勢が大挙して詰め掛けた。傍聴は抽選となり、連日の倍率は4~5倍、約80~100人が20席を巡って並んだ。法廷内に入るには身体検査も行われ、緊迫した雰囲気に包まれた。岸本若頭代行を乗せたとみられる車両が裁判所に入る際には、パトカーのみならず四駆車も警備。出入り口には複数の警察官が立つなどし、厳戒態勢が敷かれた。

法廷で口を開いた岸本若頭代行は、池田組・男性幹部への殺意も「逃走する際に威嚇のため地面に向けて撃ちました」と否認。逮捕時に、25口径の回転式拳銃と適合する実包3個を所持していた、などの銃刀法違反罪に関しては認めたのだ。

計8人の証人が出廷し、初日の尋問には被害者の前谷若頭と男性幹部も出廷。法廷での証言や防犯カメラ映像、岸本若頭代行の調書によって、事件前後の生々しい状況が明らかとなった。

令和2年5月30日、当時は神戸山口組傘下だった池田組では、射殺事件(平成28年5月31日)によって命を落とした髙木昇若頭の法要が営まれ、前谷若頭らは終了後に岡山市北区にある池田組本部に戻っていた。

前日に鳥取県から岡山県に車で入り、早朝に宿泊先を出た岸本若頭代行は、大同会関係者の運転する車両に乗り換え、池田組本部を視察。その後、自身の車両に戻って拳銃に弾を込めた。

ところが、改造拳銃だったためか5発装填の弾倉のうち1カ所だけ弾がこぼれ落ちてしまい、装填できなかったという。4発の弾を込め、直前に池田組の駐車場に組員2人が立ち話をしている姿を確認してから、池田組本部近くのコインパーキングにエンジンを掛けたまま駐車し、意を決して徒歩で現場に向かったのだ。

駐車場にいたのは前谷若頭と組員で、当の前谷若頭が「組員の知り合いが訪ねてきたのかと思った」と証言したほど、敷地内に現れた岸本若頭代行の動作は自然だった。2人の距離は5、6メートル。手に「拳銃らしき物」を見た前谷若頭は、瞬時に「いかれる(撃たれる)」と感じ、取り押さえるため岸本若頭代行に向かって突進。走り出したのとほぼ同時に、発砲音が聞こえたという。

至近距離に迫ったところで2発目が放たれ、腹部から被弾した前谷若頭は倒れ込んだ。「(さらに)撃たれると思ったので立ち上がろうとした」瞬間、アスファルトに弾丸が当たるような音を耳にし、「トドメを刺される」と感じながらも、ケガを負って動けなくなったと当時を振り返った。

岸本若頭代行は1発目の発射時から銃口は下に向け、前谷若頭が被弾した2発目に関しても足元を狙ったと主張。3発目は、倒れ込んだ前谷若頭が足に手を伸ばしてきたため、威嚇のため路面に向けて撃ったとした。

深さ25センチに達した弾丸

その後、車を止めていたコインパーキングに向けて逃走するが、発砲音を聞いて本部外に飛び出した男性幹部が、座り込むような体勢の前谷若頭を見て「撃たれた」と察し、岸本若頭代行を追い掛けた。「コラ! 待て!」と声を上げると、走っていた岸本若頭代行が振り返り、14.3メートルの距離から拳銃を向けてきたという。「撃たれる」と感じた男性幹部は咄嗟に身をかわし、弾丸は駐車場の看板支柱に命中。数人の池田組組員が追っていたが、着弾点は前方の男性幹部からわずか58センチという至近距離だった。

全弾を撃ち尽くして車両に乗り込んだ岸本若頭代行を追って、男性幹部は助手席から車内に飛び込み、ギアをパーキングに入れるなどして逃走を阻止しようとした。しかし、再びドライブに戻され、車両はロック板を乗り越えて急発進。一方通行を逆走する最中、男性幹部は岸本若頭代行の肩を掴もうとしてバランスを崩し、路面に転げ落ちた。

男性幹部は鎖骨と肋骨を折るケガを負い、被弾した前谷若頭に至っては弾丸摘出などの緊急手術を受けた。証人出廷した執刀医によると、前谷若頭の腹部から体内に入った弾丸は回転しながら穴を広げ、十二指腸などの臓器を損傷。腰近くの筋肉で止まっていた弾丸の位置は腹部から深さ約25センチで、全治3カ月の重傷だったと証言している。

犯行後、逃走した岸本若頭代行は最寄りの警察署に出頭するため、車を走らせていたという。しかし、土地勘がなく事前に調べていなかったため見つからず、後方にパトカーが見えたことから停止を求められる前に車を路肩に寄せた。事件を受けて緊急配備されたパトカーで、車を降りてから助手席に置いていた袋の中に拳銃があることを告げ、「マメ(実包)はここにある」とも付け加えたという。

弁護側は「前谷若頭を狙ったわけではなく、誰でもいいから池田組の関係者にケガを負わせようとした」とし、前谷若頭と面識があったとはいえ、犯行当時、岸本若頭代行は判別できていなかったと主張。また、コインパーキングに駐車して精算が必要になる点や、逃走の際に一方通行を逆走している点などを挙げ、計画性もないと反論した。

被告人質問において、岸本若頭代行は1発目の前谷若頭の方向への発砲時、腕は水平に上げたが、手首を下げて足元を狙ったと動作を再現して証言。3発目に関してもトドメを刺せる状況ではあったが、端から殺意はなかったために実行しなかったという趣旨の内容を述べた。

しかし、検察側の質問に対しては態度が一変。大同会でのポジションや、調書で供述した「プリペイド携帯電話を使って、知り合いに預けていた拳銃を回収した」といった内容を問われると、「黙秘します」で通した。検察側は調書を引用して、「後悔は一切していない」「あとで前谷若頭と知った。結果としていい仕事をした」と供述していると畳み掛けたが、岸本若頭代行が明確に証言したのは、犯行は一人で考え実行したという点だった。

3日間にわたって激しい論戦が繰り広げられた公判は、2月14日に結審する。

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