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大阪“孫娘”強姦・冤罪事件…無罪の祖父が語る「家族の泥沼」その後

大阪“孫娘”強姦・冤罪事件…無罪の祖父が語る「家族の泥沼」その後
大阪“孫娘”強姦・冤罪事件…無罪の祖父が語る「家族の泥沼」その後 (画像)9nong / Shutterstock

親族女性への強姦罪などで服役中に、被害証言が嘘だったと判明し、再審無罪が確定した男性と妻が、大阪府警の違法な捜査などによって損害を受けたとして、国と大阪府に賠償を求めた訴訟で、最高裁は7月14日、男性側の上告を退ける決定をした。これによって男性側の敗訴が確定した。

男性は2008年9月、当時14歳だった女性に乱暴したなどとして逮捕、起訴され、11年に懲役12年が最高裁で確定した。服役中の14年、女性が「証言は嘘だった」と告白。さらに「性的被害の痕跡はない」とする診断書の存在も分かり、同年11月に釈放され、15年10月に再審無罪が確定した。男性側は16年10月に提訴していた。

「少女は一審判決が言い渡された後に、証言は虚偽であった旨を実母と実母の夫に打ち明けているんです。ところが、偽証罪に問われる恐れがあることや、他の関係者にも迷惑がかかるという理由で伏せておくことにした。その後、実母や実母の夫と疎遠になり、男性の妻の姉にも促されたことから、真実を述べることにしたんだそうです」(大阪地裁詰め記者)

再審無罪が確定した公判の判決文によると、〈少女は、被告人から強姦等された旨の虚偽供述をした経緯等について、実母及び実母の夫から尻以外も触られていないかと聞かれ、当初は否定していたものの、問い詰められた結果、これを否定できず、最終的には胸を触られたと答えてしまい、その後、強姦についても執拗に「やられたやろう」などと問い詰められ、これも認めてしまった。強姦等の被害状況については実母から見せられた動画をもとに、実母に言われるがままに供述した〉という。

また、事件の目撃者とされていたその兄は、〈少女が泣きながら、被告人から胸を触られたと突如言い出したため、嘘とも思えず、実母及び実母の夫から長時間問い詰められ、少女からも「おにいも見たやろ」などと言われたため、話を合わせてしまった〉とされる。

「身内同士の話だから真似する奴が出てくる」

少女の実母をA子さん、被害者とされていた少女をB子さんと呼ぼう。A子さんは男性の再婚相手の連れ子で、男性にとって義理の娘に当たる。事件の伏線となったのは、A子さんの少女時代に男性が肉体関係を持っていたという事実だ。

「前回もやったんだから、今回もやったんだろうというわけです」と言うのは、男性(77)本人である。

「担当の女性検事には『絶対に許せない』と言われ、何も聞いてもらえなかった。裁判官にも公判前整理手続きの段階から、『行くとしたら、長い刑になる』と言われていた。もう最初から有罪が決まっていたわけです。控訴審から、国家賠償訴訟も担当してくれた後藤貞人弁護士に変わったんですが、A子の証人申請も高裁は認めてくれなかった。私は大分刑務所に服役することになりました」

大阪地検が再審無罪請求をすることになったとき、「偽証した2人に刑事罰を与えましょうか」と聞かれ、男性は「何とか回避できんか」と答えたという。

「そのときは2人に対する怒りより、国に責任を取ってもらいたい思いが強かった。このままじゃ少年院に行くことになるというので、私は嘆願書を書きました」

結果的に言うと、そのために不法行為による民事訴訟を起こすための時間がとられ、時効が成立してしまったのだ。国家賠償請求訴訟は「公務員の不法行為」がない限り、認められるのは難しい。

「請求額の1億4000万円は無理でも、せめて6000~7000万円は下りると思っていた。弁護士も『成功報酬のみでいい』と頑張ってくれた。でも、私のケースは身内同士の話だから、これを認めていたら、なんぼでも真似する奴が出てくる、と。誰かがちょっと臭い飯を食ってきたら、金になるという前例ができたら、ずっと判例となって残ってしまい、後を引くことになってしまいますからね」