森永卓郎 (C)週刊実話Web
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岸田内閣の後手後手コロナ対策に呆れ…~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

岸田文雄総理は1月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、まん延防止等重点措置を沖縄、広島、山口の3県に適用(1月9日~31日)すると発表した。


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昨年11月29日にオミクロン株の水際対策として、外国人の入国禁止を打ち出した際には、国民の多くが先手の抑制策を採った岸田総理を強く支持していた。


しかし、水際対策で流入が抑えられないことは、ほぼすべての感染症の専門家が主張しており、もちろん、日本へのオミクロン株の流入を遅らせる効果はあったが、現状は専門家の予想通りになってしまった。


問題は市中感染が広がったことで、今後どう対処するのかということだ。


昨年12月9日に集団感染が発生した中国の西安では、住民が原則外出禁止となり、食品などの買い物は家庭ごとに指定された1人のみが、2日に1回の外出を認められていた。一方、米国は、ロックダウンを実施せず、国民に5億回分の検査キットを無償配布する方針を決めた。


感染への抑制効果は、中国方式のほうが高いが、日本での実施は難しいだろう。日本は東京や大阪などの大都市に経済機能が集中しており、大都市のロックダウンは国全体の失速につながるからだ。


しかしながら岸田政権は、大量検査で陽性者をあぶり出す米国方式を採用する気配もない。オミクロン株の陽性者が出た地域で、無料の検査を開始していくという小出しの対策に終始しているのだ。


ワクチンについても後手後手だ。イギリスでは、昨年9月から3回目のワクチン接種が始まっているのに対して、日本は2回目の接種から8カ月後の接種開始となる。一般高齢者の接種が始まるのは2月からだ。

ワクチン調達能力がとてつもなく低い政府

なぜ、そんなに遅いのかと言えば、ワクチンが確保できていないからだ。ワクチン接種の遅れで、感染第5波を招いてしまったときの反省がないのだ。

いま日本の新型コロナワクチンは、政府が一括調達して、それを地方自治体に分配する「配給方式」を採用している。まるで戦時中から終戦後のコメの配給制度と同じだ。国民は接種券という米穀通帳を持って、ワクチン接種に行っている。


ただ、ワクチン配給制度がコメの場合と異なるのは、政府の調達能力がとてつもなく低いということだ。


政府に調達能力がないのなら、さっさと国による一括調達をあきらめて、民間が調達するように変えればいいだけの話だ。しかし、岸田総理は、そこまで踏み込まない。思いきった改革はしないのだ。


さらに、スピードが遅いのは、医療面での対応だけではない。岸田内閣は「中小企業が2022年3月までの見通しを立てられるように」と、法人は最大250万円、個人事業主は最大50万円の「事業復活支援金」の給付を決めた。ところが、この申請受付がなかなか始まらないのだ。


20年度の「持続化給付金」は、補正予算成立の翌日から申請受付が始まった。ところが今回は、昨年12月20日に補正予算が成立したにもかかわらず、それから何の動きもない。


岸田総理は「年末年始の旅行や帰省は慎重に」と曖昧な方針を示しただけで、官僚は給付作業を下請けに丸投げだ。結局、安倍政権や菅政権のときと、コロナ対策は何も変わっていないのだ。