『東京もっこり散歩―街中のふくらみを愉しむ』(自由国民社 本体価格1400円)~本好きのリビドー/昇天の1冊

街に多くの人が出てきた。暗い自粛ムードは終わり、ウイズ・コロナという新しい時代の暮らしが始まっている。

とはいえ、人が多く集まる「密」の場所は避けたい。では、どんな場所に出かけたらよいのだろう。最適なのが「散歩」。しかも、身近にありながら、普段はあまり行くことのない所への散策ではなかろうか。

『東京もっこり散歩―街中のふくらみを愉しむ』(自由国民社/1400円+税)は、そんな散歩ガイドだ。「もっこり」とは、街中に隆起した小高い丘のこと。古墳や人工的に造成された築山、神社などにある富士塚などである。地方に行かなければ見られないと思うなかれ、実は東京にもたくさんある。

同書にある「もっこり」の例。府中の住宅街に古墳がある。民家の隣だ。宅地の中にポツンとある「もっこり」は違和感丸出しだが、今だからこそ気付く魅力でもあるだろう。

昔の人は身近な場所に富士を“作った”

富士塚―富士山に模して造営された人工の山である。富士山は霊山として信仰の対象でもあるが、昔の人はなかなか登る機会がなかった。そこで、身近な場所に富士を〝作った〟わけだ。

最も高いものは15メートル弱で、「品川富士」と呼ばれ品川にある。都心のド真ん中、JR千駄ヶ谷駅近くの鳩森八幡神社にも富士塚が…。これなどは、「江戸七富士」の一つとうたわれたそうだ。

忘れられた名所だから、人は集まらない。周囲に人がいないならマスクを取り、思い切り深呼吸してみよう。気分が晴れること間違いなしだ。

(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)