北朝鮮・金正恩体制“暴走10年”の実態…はびこる女子大生売春
金正恩総書記の政権10年を振り返れば、「核・ミサイル開発」によって国際的な孤立を招き、それを原因とする経済破綻の結果、国民に塗炭の苦しみを味わわせたことに尽きる。
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2011年12月17日に正恩氏の父、金正日総書記が死去すると、その2日後、北朝鮮は長子相続社会であるにもかかわらず、三男の正恩氏が「偉大な継承者」という称号で権力の座に就いた。
その後、若き独裁者は、幹部らの粛清を通じて権力基盤を確立するとともに、対外的には融和路線を装って米韓首脳を翻弄し、国際社会からの孤立もいとわず軍事力を増強させてきた。
「権力継承後の数年間は、後見人とされた先代からの幹部らを排除することに注力しています。正恩氏の叔父に当たる正日氏の妹婿、張成沢氏は『国家転覆を企てた』として13年に粛清され、正恩氏の異母兄である金正男氏は、17年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で、VXガスにより暗殺されました。まさに恐怖政治を敷いて、クーデターに結びつく不安要素の芽をことごとく摘んでいったのです」(日本在住の韓国人ライター)
正恩氏は、国際社会からの警告を無視し、4回にわたる違法な核実験と60回以上のミサイル発射を強行。大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など戦略兵器を開発して、まさに「暴走」を続けた。
「その結果、国連安保理による厳しい制裁決議が、16年3月から6件立て続けに採択されました。この制裁は、北朝鮮にとって最大の輸出品とされる石炭をはじめ、農水産物や衣料品の輸出まで禁止させる内容でした。さらに、石油精製品の輸入も厳しく制限されて、北朝鮮経済を厳しく締め上げたのです」(同・ライター)
あまりに大きい核・ミサイル開発の代償
この制裁は17年から本格的な影響が出始め、北朝鮮の経済成長率を大きく引き下げたが、それでも北朝鮮は正恩氏の核・ミサイル開発について、最大の功績と評価している。「核・ミサイル開発の代償はあまりに大きく、現在の経済難は1948年の金王朝成立以来、最悪レベルです。平壌にあった多くの外国大使館はすでに撤収し、何しろ正恩氏自らが、『すべての部門で(経済が)目標に大きく届かなかった』と認めたほどですからね」(北朝鮮ウオッチャー)
社会的な矛盾は、稼ぐ手段のない教育当局が、各大学に対して「経済課業」という名の上納金を求めることにも現れている。
「大学の多くは上納金ノルマを学生に転嫁し、さまざまな名目で金品を提供するよう強いているのです。では、在学中の女子大生はどうやって金を得るのか。一番効率よく儲かるのは売春で、ほかに選択肢はありません」(同・ウオッチャー)
北朝鮮当局は、資本主義の影響を受けた行為全般を「黄色文化」と呼び、退廃的であるとして厳格に禁じている。そのきっかけとなったのが、昨年7月に発覚した名門女子大生約200人による売春事件だ。
「平壌にある総合レジャー施設『紋繍院』で、組織的売春が行われていたのです。施設責任者が大学教授らと結託し、上納金稼ぎに窮する女子大生を『1カ月で500ドル(約5万3000円)以上稼げる仕事がある』と勧誘し、施設内のカラオケ店で売春させていました。客は中央や市の幹部、それにコロナ禍で金の使い道がない富裕層でした」(国際ジャーナリスト)
ある女子大生が当局に告発したことから、事件に関係した者は公開処刑され、女子大生約50人が退学などの処分を受けた。この厳しい処罰により、しばらく黄色文化は影を潜めたが、最近になって再び横行するようになったという。
退廃的な“サービス”が横行
米国の放送機関『ラヂオ・フリー・アジア(RFA)』は11月末、北朝鮮における摘発の様子を報じた。この事件の舞台は、中朝国境にある新義州市の高級レストランだ。「深夜の摘発時、店内にいたのは賭博に興じていた従業員1人と、女性客と男性客それぞれ3人です。レストランは個室のほか、マッサージルームやチルジルバン(サウナ)を無断で設置していました。こうした施設は社会奉仕をうたっていますが、最近は規定に背いて客を引き入れ、賭博や売春など退廃的サービスを行っています」(前出の北朝鮮ウオッチャー)
北朝鮮には表面上、風俗店がない。そのため、サウナやカラオケ店、さらには「待機宿泊(やむなく列車が止まった場合の宿泊所)」など一般人でも気軽に利用できる施設が、売春の温床になっている。
北朝鮮の北東部、咸鏡北道の留置場では、今年の第4四半期に入ってから18人が非公開処刑された。
「処刑された18人は、『韓流取締法』とも呼ばれる反動思想文化排撃法の違反者。いずれも中国キャリアの携帯電話を使って、密輸や送金ブローカーを営んでいた人々で、国外に国、党、軍の機密を売り渡し、韓流コンテンツを輸入したという容疑です」(同・ウオッチャー)
北朝鮮当局は黄色文化の取り締まりに熱を入れているが、根絶はなかなか難しい。富裕層は法外な金を持っており、わいろや党幹部とのコネを利用すれば、いくらでも重罰を逃れられるからだ。
正恩氏10年の圧政は、北朝鮮に多くの矛盾を生み出し、なおも問題解決を複雑にしている。あてなき暴走の先には、女子大生らの悲鳴も聞こえてくる。
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