
『特攻の思想―大西瀧治郎伝』(文春学藝ライブラリー:草柳大蔵 本体価格1300円)~本好きのリビドー/悦楽の1冊
2020.10.12
エンタメ
19年前の9・11同時多発テロ事件で、世界貿易センタービルに突っ込んでいく旅客機の映像を指して、当時、〝カミカゼ〟と形容した欧米メディアの一部の報道ぶりには激しい違和感が否めなかった。
確かに前代未聞の、常軌を逸したと評されても仕方がないかも知れない肉弾攻撃とはいえ、作戦行動中の敵艦船に限定した攻撃はあくまでも正規の戦闘行為である。無辜の民を大多数巻き添えに、犠牲にするのを躊躇しない、ハイジャック犯の卑劣な犯行とは厳しく一線を画して論じ分けなければおかしいはずだ。
そこを百歩譲って海外の無知無理解と諦めるのはともかく、日本のマスコミやある種の知識人が一緒くたにして平気なのがやりきれない。まして、芸術だのアートだのの美名に隠れ、特攻隊員の遺書を素材に使って嘲弄し侮辱するが如き〝作品〟を、公共の空間に展示するとは。かつて「アウシュヴィッツのあとで詩を書くことは野蛮である」と語った哲学者のアドルノなら、その類いの行為を何と表現しただろうか?
特攻出撃をなぜ命じ続けねばならなかったか
九死に一生を得るどころか十中十死の神風特別攻撃隊を編成する構想は、決して〝暴走した軍部〟による〝狂気の産物〟などではなかった。大艦巨砲主義が時代遅れな発想といち早く指摘し、「海軍は空軍になるべき」と航空兵力と制空権の重要性を見越していた海軍中将・大西瀧治郎。徹底した合理精神の持ち主たる彼が、よりによって自ら「統率の外道」と認めた特攻出撃をなぜ命じ続けねばならなかったか。その背景を追いつつ、ひとつの戦法が、断腸の決断が、やがて彼の中で思想そのものに変質する過程が惻惻として身に迫る。映画『あゝ決戦航空隊』で大西役を演じた鶴田浩二の解説も、哀しく味わい深い。(居島一平/芸人)
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