北朝鮮の金正恩総書記の妹・金与正党副部長の消息が、2カ月以上も公開されていない。
「与正氏は昨年も66日間にわたり姿を消したことがあるので、おそらく12月下旬に開かれる党中央委員会総会で、『対南・対外政策』や『金正恩主義における指針』を発表する準備で忙しいのでしょう」(北朝鮮ウオッチャー)
最近の北朝鮮メディアは、与正氏を「偉大なる党中央(朝鮮労働党の中心人物)」と呼称する一方、正恩氏を「偉大なる首領であられる金正恩同志」と、これまでの「最高指導者」や「将軍」から「首領」という呼称に変えている。
「北朝鮮で首領と言えば、建国者で正恩氏、与正氏の祖父・金日成主席を指しますが、ついに与正氏の偶像化作業によって、兄を日成氏と並べたのです」(国際ジャーナリスト)
この偶像化作業には、与正氏の宣伝扇動部が中心的な役割を果たしているが、党中央委員会総会には彼女自身も、首領と並ぶ党中央として登場するに違いない。
北朝鮮の全国民はもはや袋のネズミ
12月2日に米韓国防長官は、ソウルで行われた定例安保協議(SCM)で「新しい戦略企画指針」を策定しており、与正氏はこれを強く批判するだろう。
与正氏が権力を掌握する中、熾烈を極めるのが脱北者に対する厳罰だ。
「経済が逼迫しているにもかかわらず、北朝鮮は脱北を事前に防ぐため、中朝国境を流れる鴨緑江と豆満江に、DMZ(南北非武装地帯)よりもはるかに頑丈な鉄条網や鉄柵、コンクリート壁を築き、100メートルおきに監視カメラまで設置しました。鉄条網は全長が大阪~沖縄間に匹敵する長大な物で、北朝鮮の全国民はもはや袋のネズミです」(同)
それだけではない。与正氏は無慈悲にも、海外派遣労働者に対して、「脱北を企図した者は、脚に傷害を負わせた後で帰国させるべき」という指針を出した。
海外労働者は党に忠誠を尽くす労働党員が選ばれ、しかも、国内に家族を人質に取られている。それでも脱北を試みるほど、北朝鮮には住みたくないのだ。
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