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蝶野正洋『黒の履歴書』~プロレス界を盛り上げる対抗戦

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

年明け1月8日に行われる新日本プロレス横浜アリーナ大会に、プロレスリング・ノアの選手が参戦することが発表され、新日本VSノアの対抗戦勃発か、と大きな話題となっている。

どの選手が対抗戦にエントリーされるのか、対戦カードはどうなるのか。それに勝敗は…と語りだすとキリがない。ファンにとっては、楽しみなイベントだと思うよ。

それに加えて、それぞれの会社の内情はどうなっているのか、という見方もある。今までのプロレスの歴史で言えば、こういう対抗戦が行われる時は、どちらかの団体の経営が危ない場合が多いからね。

武藤敬司さんと髙田延彦さんが試合をした1995年の新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争は、Uインターが会社がガタガタだったといわれている。

俺自身の経験で言えば、2002年5月の東京ドームのメインでノア所属だった三沢光晴社長を引っ張り出して試合をした時は、新日本プロレスのほうが危なかった。

この年の初めに新日本内部でクーデターが起こって、武藤さんが選手やフロントスタッフを引き連れて離脱。残ったスタッフも、自分の立場を守ることが先決で、5月に押さえてある東京ドームのことなんて誰も考えていなかった。

当時、俺は現場監督を任されていた。5月のドームを成功させないと新日本は潰れる。じゃあ、それを引っくり返せるカードはといえば、蝶野正洋が三沢光晴とやるしかない。それでいきなり三沢社長に電話して、「一騎討ちお願い出来ないでしょうか」と打診した。かなり失礼なオファーだったとは思うけど、三沢社長に「ちょっと待ってくれって」と言われて、30分後に電話がかかってきて「やろう」と。あの件は本当に感謝しているし、おかげで新日本は生き延びたと思ってる。

選手たちには“フロントの事情”なんて関係ない

では、今回の対抗戦では、どちらの団体がピンチなのかと考えると、どちらも苦しいところなんだと思う。選手の人気はそれほど落ちていないけど、コロナで観客動員が少なくなってしまった。それに、外国人選手を呼べないから、対戦カードがマンネリ化しているという事情もあるはずだ。

今、新日本プロレスはブシロード、ノアはサイバーエージェントと、それぞれオーナー会社がついてる。だからこそ、現在の状況を冷静に考えて、ビジネスとして平和的に握手できたんじゃないかな。これに選手が絡むと、揉めるだけだからね(笑)。目的はプロレス界を盛り上げることで一致したんだと思う。

ただ、実際に試合となると、選手たちの気合いは入ってると思うよ。フロントの事情なんて関係ない。やるとなったら負けられないという対抗心がメラメラ燃えているはず。

俺も対抗戦とかアウェーの時ほど燃えたからね。相手選手に勝つことはもちろん、向こうのファンに俺の試合を見せつけて、1人でも新日本プロレスに呼び込んでやろうということも狙っていたからね。

とにかく、この試みが成功すれば2022年のプロレス界は面白くなっていくはず。それにオーナー同士でビジネス的に手を組めるというモデルケースを作って、プロレス界全体のコミッションや協会を設立するという動きにも繋げてもらいたいね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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