
「越山会の女王」田中角栄の事件史外伝『越山会―最強組織はどうつくられたか』Part2~政治評論家・小林吉弥
「炭管事件」で逮捕され、収監された小菅の東京拘置所の独房で、折からの総選挙に「獄中立候補」という異例の声を上げた田中角栄は、投票日まで残すところわずか10日となって、ようやくの保釈を得た。
そして、選挙区〈新潟3区(中選挙区制)〉内の南魚沼郡六日町で〝第一歩〟を踏み出した。このことで、のちに政治家個人の唯一無二、前代未聞にして最強の後援会となる「越山会」の発祥の地は、この南魚沼ではないかという声があった。
また一方で、いや田中の生地である刈羽郡二田村、あるいは柏崎市が発祥の地ではないかとの声もあったが、正式な発祥の地は保釈第一歩の夜をすごしたあと、最初の遊説の地として向かった加茂市であるというのが、のちに定説となったものだった。
なぜ、田中は遊説の第一歩を加茂市としたのか。
のちに、加茂越山会の幹部は、筆者にこう語ってくれたものだった。
「加茂には、田中の兵隊時代の人脈があったことが大きかった。苦楽を共にした兵隊時代の仲間の紐帯感は強い。同じ〝釜のメシ〟を食った人間関係より、強い絆はないということだ。とくに、片岡甚松さんがいたのが大きかったのではないか。
「新潟3区内すべてに越山会のノボリを立ててみせる」
それまでも各地に田中支援の〝重立ち(旦那衆)〟がいて、個々に田中後援会を名乗っていたが、まだ越山会という正式名称はなかった。ために、田中がじきじきに片岡さんら戦友仲間を集め、こう頼んだとされている。『俺の各地のグループを発展解消する形で、正式な後援会をつくってくれないか。後援会の名前は、越山会でどうか。いまに見ていてくれ。俺は(新潟3区内の)すべてに越山会のノボリを立ててみせる』と、えらい意気込みだったそうだ」
ここに出てくる片岡甚松という人物と田中の関係は、田中が戦時中、盛岡騎兵隊第三旅団第二十四連隊第一中隊に上等兵として所属していたときにさかのぼる。田中がソ満国境に近い松江省に駐屯していたときの上官が、陸軍士官学校出身の片岡中隊長ということだったのである。
田中は当時、この片岡に一度、殴られたことがあった。帽子をかぶらずに上官である片岡に敬礼したのをとがめられ、田中にビンタが飛んだということだった。
片岡は、昭和28(1953)年6月28日、初めて後援会を「越山会」として以降、終生、田中を支え続けた。やがて各地の田中後援会が越山会を名乗り始めたあとも、それぞれを統括する県越山会の会長として、目配りを欠かさなかったものだ。強大な組織には、どんな種類でも、トップリーダーの〝名代〟となるような人物が不可欠であることを証明した形だった。
一方、田中は「越山」の雅号を、じつはすでに初当選の頃から色紙などで使っていた。時に〈新潟3区〉内では、400年近く前の天正2年(1574年)、上杉謙信が加賀、能登の掃討作戦で吟じた、次のような漢詩『九月十三夜陣中作』が〝ネタ元〟だろうとの見方があった。
霜満軍営秋気清(霜は軍営に満ちて秋気清し) 数行過雁月三更(数行の過雁月三更) 越山併得能州景(越山併せ得たり能州の景) 遮莫家郷憶遠征(さもあらばあれ家郷遠征を憶う)
「霜は早くも軍営に降りて、秋の気は澄み渡っている。数列の雁が月を横切って、夜中というのに飛んでいく。故郷の越後を発ち、いま越路の眺めに合わせて、すばらしい七尾湾の景観を楽しむことができた。故郷では自分の遠征を気遣っているだろうが、そんなことはどうでもいいのだ」といった、謙信の戦いに挑む心意気をあらわしている。
しかし、のちに田中は、越山会発行の会員紙『月刊越山』で「号は、字義どおり越後の山という意味と、東京と行き来するには(上越国境の)山を越えなければならないという意味からのものだ」として、かねてからの〝謙信由来説〟を否定している。
秘書にして愛人の佐藤昭子が会計責任者に就任
また、そのうえで、当時、保守本流のスター政治家の岸信介が「箕山会」、池田勇人が「宏池会」、佐藤栄作が「周山会」と命名した独自の政治結社を持っており、自らも将来を見据えての「越山会」としたようであった。前出の加茂越山会の幹部は、こう続けたものであった。
「まだ陣笠議員だった田中は、さすがに〝越後の名将〟謙信の漢詩から号を取ることを恥ずかしく思い、精いっぱいの否定をしたのではないか。若い頃から、一見すると豪放だが、神経はこまやかな男だったから」
発祥の加茂越山会を機に、〈新潟3区〉内の各地後援会が、以後、続々と越山会を名乗り始めた。しかし、この期、越山会は単なる後援会としての集まりだったが、正式に政治結社「越山会」として発足したのは、のちの昭和36(1961)年7月、田中が自民党3役の一角である政調会長に就任してからであった。
越山会の正式な会計責任者には、秘書にして愛人の佐藤昭子が就いた。佐藤はやがて、永田町で「越山会の女王」と呼ばれるようになるが、そのスタートでもあった。
政調会長就任で国家予算の編成に影響力を持つようになった田中は、自身と越山会の関係をさらに強固にし、また、のちに異形なものにした。とりわけ公共事業費を〈新潟3区〉に投下したことで、双方の思惑が一致することになる。「越山会にあらずんば人にあらず」の一方で、田中自身の選挙はさらに盤石度を増すということでもあった。
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