さらば青春の光 (C)週刊実話Web 
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一発逆転を狙うM-1芸人たちの凄み~『さらば青春の光』インタビュー

――まず、ファイナリストとなった2016年大会のことから教えて下さい。


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森田(以下、森)「僕らはコントを主にやってるんで、漫才で出たM-1ではまさか決勝行けると思ってなかった。だから決勝進出が決まった時、『これはえらいことになった』と思いました。賞レースが好きやから出させていただいたって感じで、もちろん一生懸命はやったんですけど、ちょっとだけ『すんません』っていう気持ちもありました」


――申し訳なさがあった?


森「1年かけて何十本ってネタを準備する漫才師がたくさんおる中で、僕らは『キングオブコント』が9月に終わって、そこからM-1のネタに取り掛かったんです。準決勝なんて、3日前にできたネタでした。大博打して勝ったという感じでしたから」


東ブクロ(以下、ブ)「準決勝でウケてるけど、まさか(大会側も)通しはせんやろうと」


森「だから、『ラッキーやな』って思ったのと同時に、『俺らもM-1っていう大会に出ることが許されるんや』っていう気持ちにもなりましたね」


――決勝戦、緊張はしませんでしたか?


森「本番で、僕らの前に演った相席スタートがめちゃめちゃお客さんにウケてたんですよ。ところが、審査員の点数が大したことなかった。それを見て、緊張してるブクロに『なんぼウケてもこの点数になるんやったら、緊張するだけ損や』って言って。それでパッと緊張がなくなりましたね」


ブ「そんなん言うてますけど、せり上がりで震えてましたから(笑)。でも決勝に出て、反響がいちばん大きかったのもM-1でしたね」


森「その年、キングオブコントで決勝に行けずに、今年の会社の売り上げどうやろって心配してましたけど、M-1決勝に出られたおかげで仕事もいただけました」


決勝進出による「M-1効果」も感じた反面、厳しさも味わったという。


ブ「厳しかったのは、敗者復活戦ですかね」


M-1の敗者復活戦は、準決勝で敗退したすべてのコンビが決勝戦当日、野外会場に集められ、たった1つの決勝への「敗者復活枠」を巡りネタを披露する。


ブ「あそこを通るのは、普通に決勝行くよりも難しいですよ」


森「敗者復活戦の会場は野外やから、寒くて、高速道路がすぐ側を通ってるんでお客さんも集中できてなくて…と、環境としてはかなり悪いんです。あそこで爆笑巻き起こせるのは、やっぱり本物の漫才師ですよ。僕らみたいな、にわか仕込みでは技術も足らんし無理やろうなって思います。僕らは、あそこに行ったら負け確定って感じです」

準決勝は博打が打てる唯一の場所

そんな劣悪な環境でこそ強いのが、「吉本芸人」だと2人は口を揃えて言う。

森「もう百戦錬磨なんですよ。彼らは毎日劇場やってて、場数が違うんです」


ブ「野外の営業とかも行ってるでしょうしね。劇場と野外だと、ネタを演る時のテンポ感も違ってくると思うんですよ。そういう戦い方が分かってないと、たぶん勝てないんです。あとは単純に人気もありますし、そういうところも強い」


森「そら、『吉本芸人が強い』って構造にもなります」


――M-1は「大阪吉本の息がかかってるから」という意見も耳にします。


森「それはないです。今や準決勝からは東京で行われているわけで、大阪吉本の芸人にしたらアウェーだし、けっこう不利なんですよ。そこで勝ち上がってこられるってことは、それだけ実力があるってことです」


漫才師としての底力――それがM-1を席巻する吉本芸人の強さならば、他の事務所の芸人はM-1でどう戦うべきなのか。


森「設定一発でいくとか。後はとにかくストレートで(敗者復活には行かずに)進むことですね。僕らの場合はそうでした」


――そういう戦法って、どうやって思いついたんですか?


森「M-1の準決勝には何度も出してもらってましたから、なんとなく戦い方は見えてた感じですね。それに僕らがコントやってるのはお客さんも分かってたから、『どういう漫才してくるんだろう』っていう期待もあるはずなんで、目新しい漫才をしたほうがいいんじゃないかとは思ってました。それがいい感じでハマったんじゃないかなと」


――そのあたりを踏まえて、M-1出場者が勝負をかけてくるポイントは?


森「準決勝やと思います。準決勝は博打が打てる唯一の場所だと思いますね。『あと1個勝てばいい』っていうところで、みんな勝負に出てくる」


ブ「準決勝が、ライブとしていちばん面白いんじゃないですか? 全員が1年のいちばん強いネタを持ってくるライブなんか他にないので、お笑いファンからしたらたまらんと思いますね」


取材させていただいたのは準々決勝が終わった数日後。こんな質問をしてみた。


――準々決勝まで見た上で、お2人が今大会で注目しているコンビは?


森「見取り図、ニューヨーク、ランジャタイとか、一緒にやってきた人たちは頑張ってほしいなと思う半面、ニューカマー、いわゆる無名枠のコンビに頑張ってほしいですね。たとえば、ヨネダ2000とか。以前、THE Wでヨネダ2000を見てて、これは決勝映えするなと思いましたね。ああいう大会をかき回してくれるコンビを2組くらい決勝に残してくれたらなと」


かつての大会でも、ニューカマーたちが盛り上げてきた。無名のコンビが本番で有名なコンビに勝つ、これもM-1ならではの魅力なのだ。

すべてが詰まってるM-1のオープニング

――お2人は、キングオブコントやR-1グランプリにも出場されていますが、M-1とほかの賞レースとの違いは何でしょうか。

森「M-1って、漫才師が強烈に格好よく見えるんですよ。そのすべてが詰まってるのが、あのオープニングやと思うんです」


M-1は番組冒頭に、決勝戦に出場する芸人たちの大会にかける悲喜こもごもをドキュメンタリー風にまとめたオープニング映像を用意している。


森「あのオープニングが客を緊張もさせるし、1年に1回のあの映像を見て芸人になろう、漫才師になろうって人がめちゃくちゃおると思うんです。そこが明確に違うんじゃないですかね。やっぱりABC(朝日放送テレビ)さんが、漫才師をどの局よりも最大限にリスペクトしてるからこそああいう演出になると思うんですけど、あれはM-1にしかないですね。ただ、芸人をそこまで持ち上げてええんかっていう賛否はあるんで、いいか悪いかの判断が難しいですけどね」


――では、お2人が思うM-1の凄さとは?


森「(決勝の)視聴率20%超え。それがすべてを物語ってんじゃないですか。そこに尽きるというか」


ブ「M-1は、一発逆転を狙ってる芸人らの、唯一の頼みの綱なんですよ。ほんまにM-1終わった後、コンビ解散したり、芸人やめていったりする人がドサッといる。『今年あかんかったからやめよう』とか『残ったから売れるぞ』っていう、いちばん分かりやすく芸人の契機になる大会なんです」


――目標になる大会だと。


ブ「最大の目標じゃないですか。『M-1あかんかったらやめよう』っていうコンビが多いのはいいのか悪いのか分かりませんけど、『出られたら売れるんや』っていう目標になってますから。『M-1の決勝行ったんやから』って、親を納得させたりもできるでしょうからね。なかなか日の目見てへん芸人は、そこにしかかけるもんがなかったりしますから」


森「M-1は、むちゃくちゃ楽してこの世界に入ってきた奴らを、唯一努力させる大会なんじゃないかって思いますけどね(笑)」


2001年にスタートしたM-1グランプリは、1つの番組という枠組みを超え、あらゆる漫才師が意識し、芸人として大きな目標にする大会になったのだ。文字通り笑いに人生をかける芸人たちの凄みを感じられる決勝戦は、12月19日に生放送される。


(文:牛島フミロウ/企画・撮影:丸山剛史)
さらば青春の光(森田哲矢、東ブクロ) 2006年に松竹芸能タレント養成所で出会い、08年にコンビ結成。 コントを中心にお笑い芸人として活動している。「キングオブコント2012」準優勝、 「M-1グランプリ2016」決勝4位など賞レースにも強い。現在はライブ活動のほか 『さらば青春の光Official Youtube Channel』など随時更新中!