
「一気に田中支持」田中角栄の事件史外伝『炭管事件と獄中立候補』Part7~政治評論家・小林吉弥
無所属出馬を余儀なくされたことで、ラジオでの政見放送が不可能となった田中角栄だが、選挙広報には「炭管事件はヌレギヌである」と記した。
一方で、小学校などの演説会場でのそれは、話の柱はおおむね二つであった。
一つは、初出馬から口にしていた、かの有名な「三国峠演説」であった。
「ええですか、皆さーん。こ、この新潟と群馬の県境にある三国峠を切り崩してしまう。そうすれば、日本海の季節風は太平洋側に抜け、皆さんが苦しむ越後・新潟の雪は降らなくなるのであります! ナニ、切り崩した土は日本海へ持っていけばええんですよ。日本海を埋め立てて、佐渡を陸続きにさせてしまえばええのでありますッ」
東京などに住む都会人にとって雪はロマンでもあるが、1年の3分の1を雪との闘いに明け暮れる新潟では“生活の敵”でもあった。若き田中には、「豪雪」が政治への原点であったのである。
そのうえでもう一つの柱は、「小菅報告」であった。例えば、こうである。
「えー、私はね、解散してからの1日は10日ぐれェに長く感じたものであります。まァ、獄にいて感じたことが一つあるんです。それはね、いまでも同じように収容されているシベリアの未帰還の兵隊さんのことであります。この経験を活かし、私は大いに頑張って帰還運動に努力するつもりであります!」
田中の浪花節に会場は大ウケ
“小菅とシベリア”に、どう相関関係があるのか説得力不足は歴然で、必ず付いて回ったのが「あの問題はどしたッ」「逃げないで、ハッキリ聞かせろッ」といった野次であった。要するに、聴衆は「小菅問題」に興味があり、田中としてはできるだけ避けて通りたいところだが、そうは問屋が卸さなかったということである。
もっとも、田中支援者の中には知恵者がいて、聴衆を多く集めるために「炭管で小菅に1カ月の話題の田中角栄氏来たる!」と“宣伝文句”にも使っていた。
当時の「重立ち」と呼ばれる旦那衆で田中支援者の一人は、次のような証言を残している。
「炭管絡みの野次は、どこの演説会場でも必ず飛んできた。先生、ここでもそのたび、しきりに潔白を訴えようとするんだが、緊張するとかえって例の吃音でドモってしまう。時に、何を言っているのか、よく分からないときもあった。
まァ、聴衆のほうもだんだん面倒になってきて『もう演説はええ、チョンガリ(浪曲)でも聞かせてみれ』となってくる。田中の浪花節の上手さは、すでに知られていたところだった。そこは先生だ、『ヨッシャ』で直ちに浪花節のサワリ一席に切り替えられる。
これはどこでも大ウケで、以後、先生も味をしめたのか、立会演説会の大半は浪花節のみで切り抜けたところがだいぶあった。天中軒雲月、伊丹秀子、春日井梅鶯、寿々木米若、広沢虎造、玉川勝太郎、東家浦太郎と、なんでもござれで、とくに“杉野兵曹長の妻”は泣かせたものだ。
しかし、最後だけは『道路、橋、堤防、まず早急に整備しなければ、この地の文化の発展はない。郷土の皆さんのために、大いに働くつもりであります!』と結ぶのが常だった」
昭和24(1949)年1月23日の投票の結果、田中は定数5の〈新潟3区〉で、前回選挙より3000票を増やしての42536票を獲得、2位で当選を果たした。出身地の柏崎、刈羽で票を減らしたものの、南・北の魚沼郡では前回票より倍増となった。ちなみに、このときの選挙で高級官僚だった池田勇人、佐藤栄作が、ともに初当選を飾っている。のちに首相となり、田中の政治の親分格ともなる2人である。
「この選挙で南・北の魚沼では、若者や仕事に恵まれない層が一気に田中支持となった。以後、この地は田中の〈新潟3区〉の大きな拠点となった」(当時の南魚沼の田中支持者)
一方で、田中は当選を果たしたものの、炭管事件による逮捕、東京拘置所収監というダメージは大きく、信用を失ったことで「田中土建工業」の経営は傾き、東京・飯田橋の自宅も抵当に入るといった具合だった。すでに、田中が“旦那”となっていた花街・神楽坂の芸者「円弥」(のちに“神楽坂夫人”と言われた)も、その著書『熱情』(講談社)で、「おカネもいろいろと入り用だったことから、私も懸命にお座敷回りをこなさざるを得なかった」と語っている。
やがて強大無比の後援会組織「越山会」構築へ
ここから尾羽打ち枯らした感のある田中は、しばし「雌伏の時代」を過ごすことになる。中央政界で陽の当たるポストなどが回ってくるわけもなく、田中はまず左前になった「田中土建工業」の再建と、選挙区内の陳情要望に耳を傾け続けたのだった。そして、その先には「このままでは政治生命が先細りになりかねない」との危機感から、自らの強固な後援会づくりへの青写真があった。人間、逆境や不遇のときに何をやるかで、その先の人生は大きく変わってくる。うつむいてしまうか、逆にエネルギーを爆発させ、もう一度、チャレンジしてみるかである。田中は、後者であった。
やがて強大無比の後援会組織「越山会」を構築、これを足場に天下取りへ突っ走ることになるのである。
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