森永卓郎 (C)週刊実話Web
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みずほ銀システム障害は金融庁の責任も大~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

みずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博会長と坂井辰史社長、そして傘下のみずほ銀行の藤原弘治頭取らが、2022年4月1日付で辞任する。相次ぐシステムトラブルに関して、金融庁から業務改善命令を受けたことによる引責辞任だ。


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金融庁は改善命令の中で、今年2月から9月の間に8回もシステム障害を起こした原因について、以下のように述べている。


「執行部門がIT現場の実態を十分に把握・理解しないまま、『MINORI』が安定稼働していると誤認し、障害発生時も影響範囲が局所的になりやすいというMINORIの特性を過信していた」


MINORIというのは、みずほ銀行が統合前のシステムを一新するために構築した新しい基幹システムのことだ。金融庁は、みずほの経営者たちが、このシステムを過信して十分な管理をしていなかったから、システム障害が発生したと断罪したのだ。もちろん、そのこと自体は正しいのだが、私は背後により本質的な問題が隠されていると考えている。


みずほFGは、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の経営統合によって生まれた。統合前の勘定系システムは、第一勧銀が富士通、富士銀が日本IBM、興銀が日立製作所と、三行は完全に分かれていた。そこで統合後は、個人や中小企業向けのリテール分野のシステムを第一勧銀に(開発は富士通)、投資信託システムは富士銀に(開発はIBM)、大企業向けのホールセール分野は興銀に(開発は日立)、それぞれ集約する形にした。それらのシステムをつなぎ合わせることによって、基幹システムとしたのだ。

“対等合併”の弊害は明らか

しかし、この建て増しを繰り返した温泉旅館のような寄せ集めシステムが、さまざまな障害を起こしたため、みずほはシステムを一から作り直す全面刷新に踏み切った。それが、現在のMINORIである。

ところが、MINORIの構築は当初からおかしなところだらけだった。システム開発を行う主要ベンダーには、富士通、IBM、日立、NTTデータの4社がそろい踏みし、下請けや孫請けを含めると、およそ1000社が開発に携わったとされる。しかも、IBMのマシンの上で富士通が勘定系システムを構築するという、考えられないことが行われた。さらに日立は、外国為替取引などのシステム構築を手掛けた。


何が起きたかは、もうお分かりだろう。MINORIの構築は、旧三行を支えた富士通、IBM、日立という3つのベンダーを中心に、旧取引先のベンダー総がかりで行われた。つまり、建て増し旅館を建て直すために、建て増し設計のまま新築してしまったのだ。


三菱UFJ銀行で、みずほのような障害が起きていないのは、事実上、三菱による吸収合併だったために、旧三菱のシステムに統合されたからだ。


みずほもシステムを一本化しなければならなかったのだが、なまじ対等合併だったために、各行が自社の取引先を切り捨てることができず、マルチベンダーになってしまったのだ。


金融庁は最初から、システムの完全一本化まで踏み込んで改善命令を出すべきだった。つまり、システム障害は金融庁にも大きな責任があるのだ。