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「南海トラフ」「首都直下」「富士山噴火」…山梨・和歌山“連続”地震との関連性

(画像) Stokkete / shutterstock

12月3日午前6時37分頃、山梨県東部富士五湖を震源とする地震があり、山梨県大月市で震度5弱の揺れを観測した。

関東甲信越の広い範囲や東海の各地でも震度4から1を記録。富士五湖では、約4時間前の同日午前2時18分に震度4が起きたほか、その5分後の午前2時23分にも震度3の地震が発生している。

一方、これまた同日午前9時28分頃には、紀伊水道を震源とする地震があり、和歌山県御坊市で震度5弱、三重県熊野市、兵庫県南あわじ市、和歌山県田辺市、徳島県阿南市、香川県さぬき市などで震度4の揺れを観測した。気象庁によると、震源の深さは約18キロメートル、M(マグニチュード)は5.4だった。

武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀氏が語る。

「山梨の地震と和歌山の地震に直接の関連はないと思います。ただ、和歌山の震度5弱の揺れは南海トラフ地震の前に起こる直下型地震の1つに数えられます。富士五湖を震源とする地震は震度5弱でしたが、地震には高周波地震と低周波地震がありましてね。怖いのは低周波地震です。富士山直下で2000年10月に低周波地震が観測され、〝マグマ溜まり〟が生きていることが大きなニュースとなりました。今回の地震も低周波地震だと思います」

現在、富士山の地下約20キロメートルには、高温の液体マグマで満たされた〝マグマ溜まり〟があるという。これが地表まで上がってくると噴火が始まるのだ。噴火の前には、さまざまな前兆現象が観測される。低周波地震はマグマ活動の初期に必ず起きるため、噴火予知では非常に重要視されている。

噴火しなかったのが不思議でならない…

「2011年の東日本大震災の際は、静岡県富士宮市で震度6強の誘発地震が発生しました。その際、火山噴火予知連絡会副会長の中田節也氏は、震源が富士山のマグマ溜まりのすぐ上、山頂の南4キロメートル、深さ約15キロメートルであったため、『富士山が噴火しなかったのが不思議でならない』と語っています。実際、マグマ溜まりの天井はヒビが入った状態だったと言われています」(サイエンスライター)

そのマグマ溜まりが少しずつ上昇している可能性があることを考えると、島村氏が警鐘を鳴らすことも合点がいく。

「フィリピン海プレートの先端と陸側プレートが接触する辺りが、紀伊水道、富士五湖の地震が発生した地点。これまで何度も地震が起きています」(防災ジャーナリスト・渡辺実氏)

フィリピン海プレート延長線上の茨城県でも震度4クラスの中規模地震が頻繁している。実際、12月2日午前1時58分頃には、茨城県と栃木県で震度4の揺れを観測する地震があった。震度4の揺れを観測したのは、茨城県筑西市、栃木県の鹿沼市、下野市、それに高根沢町。茨城県はまさに「火薬庫」とも言われる地震多発地帯なのだ。

「1923年から茨城県で発生したM6.4以上の地震は、10回を数え(12月6日時点)、全国でも特に大きな地震が起きる地域であることが分かる。地震が頻発する原因として、フィリピン海プレート、北米プレート、太平洋プレートの3つのプレートがぶつかる場所にあるためとされます」(前出・サイエンスライター)

茨城県を震源とする地震は、首都直下の前兆とも専門家から指摘されている。1200年前の東日本大震災に例えられる貞観地震(869年)の9年後に発生した典型的な首都直下地震を見てみよう。

歴史書に記された巨大地震の爪痕

元慶2年(878年)9月29日夜、関東地方を非常に強い地震が襲った。京都の朝廷の命令で編纂された歴史書『日本三代実録』には、こう記されている。

『9月29日夜、京都で地震を感じた。この日、関東地方で大きな地震があり、特に相模国と武蔵国で揺れが激しかった』

相模国と武蔵国は東京都、神奈川県、埼玉県を合わせた範囲に該当する。

「何年先になるか分からないが、10月7日に起こった震度5強(震源地・千葉県北西部)の地震より、エネルギーが1000倍大きい地震が関東で発生すると思います」(前出・島村氏)

1200年前の相模、武蔵地震はどうだったのか。日本三大実録には、こう記されている。

『官庁も民家も無事な建物は1つもなかった。余震が5、6日続き圧死者は数え切れないほどだった』

『相模国の国分寺にあった金色の薬師丈六像と脇侍の菩薩像2体が地震の揺れで完全に破壊された』

5メートル近い薬師丈六像が破壊されたのだから、少なくとも震度7はあったに違いない。9年後には南海トラフ地震の1つに数えられる仁和地震(887年、M8~8.5)が発生している。

「和歌山県沖は普段はあまり地震が起きない地域です。ところが、今年は和歌山県で二度、震度5の強い地震が発生した(1回目は3月15日)。紀伊水道や和歌山県の内陸で、M5~6クラスの地震が発生した場合は、南海トラフ地震につながるリスクがあるので要注意です」(前出・渡辺氏)

鹿児島・トカラ列島で相次ぐ地震も不気味だ。南海トラフ、首都直下の巨大地震が発生すれば、天井にヒビが入ったマグマ溜まりが急上昇、富士山大噴火を引き起こす――。すべてが〝想定外〟ではないことを、心に留めておきたいものだ。

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