企業経済深層レポート (C)週刊実話Web
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家電1位ヤマダVS家具1位ニトリの仁義なき戦い~企業経済深層レポート

家電量販店、小売家具、ホームセンター(HC)業界で、垣根を越えた大再編の嵐が吹きつつある。小売業関係者が言う。


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「業界大再編の兆候としては、家電量販店大手の『ヤマダホールディングス』(群馬県高崎市)が、畑違いの巨大ショッピングセンター(SC)運営に乗り出したことにも現れています」


ヤマダは9月21日、HC業界中堅(業界売上高第5位)の『アークランドサカモト』(新潟県三条市)と、店舗開発で業務提携することを発表した。それによれば、今後3年間で6店舗の出店を計画しているという。


来年度は手始めに、東京都心のベッドタウンである八王子市と、名古屋市のベッドタウンである愛知県一宮市の2カ所に出店。以降、神奈川県平塚市、石川県野々市市、大阪府茨木市などに続々と出店する計画だ。


いずれも延床面積2万坪、広大な敷地に大型駐車場を完備し、ヤマダの家電量販店とアークランドのHCを展開。これに併設して1000坪程度のスーパーや専門店を配置し、一大SCにする計画だ。


この動きをHC業界の関係者が解説する。


「ヤマダはご承知のように、日本最大の家電量販店。そのヤマダがHC業界の風雲児、イケイケ集団のアークランドとタッグを組み、巨大SCを展開するのだから、家電、家具、ドラッグストアなど小売業界に激震が走っている」


では、アークランドとは、いったいどんな企業なのか。


「数年前までは新潟や北陸地方を中心に、『ホームセンタームサシ』を展開していた業界11位の企業でした。それが昨年に一躍脚光を浴びたのは、住宅設備機器最大手のLIXIL(リクシル)系列のHCで、当時、業界6位だった『LIXILビバ』に、約1000億円を投じて〝下克上買収〟を仕掛けたためだ」(同)

10年先の苦境を見据えて…

この買収によってアークランドは、22年2月期の連結決算で売上高3650億円となり、21年2月期の業績対比で売上高は2倍、純利益は2.2倍と、いきなり業界5位に駆け上がった。

「アークランドといえばHC事業だけではない。上場子会社の『アークランドサービスホールディングス』が、カツ丼専門店『かつや』を運営しています」(同)


それにしてもヤマダが、異業種同士の提携に踏み切った背景は何か。経営アナリストが断言する。


「根っこにはヤマダと、家具量販店最大手『ニトリホールディングス』との激しい陣取り合戦がある。先に仕掛けたのはニトリ(札幌市)で、昨年末にHC中堅の『島忠』(さいたま市)を傘下に収めました」


しかし、全国で600店舗を運営する破竹の勢いのニトリが、店舗数60店前後の島忠になぜこだわったのか。


「おなじみの『お、ねだん以上。』で急成長してきたニトリの売上高は、2020年で対前年比11.6%増の7169億円と、右肩上がりを続けている。だが、10年先を見据えれば、国内市場が人口減少で苦境に陥るのは必至。ニトリは『2022年、1000店舗、売上高1兆円』『2032年、3000店舗、売上高3兆円』を目標に掲げていたが、コロナ禍もあって暗雲が立ち込め始めた」(同)


HC業界は昨年こそコロナ禍の巣ごもり需要でやや回復したものの、ここ数年は他業種との競合やHCの増加に伴う〝共食い現象〟で、売上高4兆円前後と頭打ちになっている。


ニトリは、そんなHC業界の実情を見極め、M&A(企業買収)に打って出た。ニトリが島忠にこだわった理由は、島忠がHCであるとともに、同じ家具も扱っている点だ。

業界の垣根を越えて直接対決

加えて島忠は、店舗の9割が首都圏に集中している。ニトリはさらなる飛躍のために、大都市部での出店を模索していたが、出店地の確保に苦戦していた。そこに浮上したのが島忠というわけだ。

ニトリは島忠買収後の今年6月、さいたま市に融合第1号店の『ニトリホームズ宮原店』をオープンさせた。M&A業界の関係者が解説する。


「このニトリの動きに触発されたのが、将来的に家電のみでは生き延びられないと、次の道を探っていたヤマダです。ヤマダは大手家具販売の大塚家具を傘下に入れ、さらにハウジング事業にも参入していた。そんな矢先、ニトリが島忠を買収してヤマダの前に立ちふさがったのです」


それだけではない。ニトリは今や冷蔵庫、調理器など、家電販売にも乗り出し、ヤマダの本業を侵食しつつある。


「ヤマダはニトリの攻勢に焦った。それがアークランドとの提携につながったとみている」(同)


家電と家具の国内2強が、業界の垣根を越えて直接対決に動き出した。この動きには、大型SCを展開する『イオン』(千葉市)や『イトーヨーカ堂』(東京都千代田区)なども戦々恐々。指をくわえて見ているだけでは一気に淘汰されかねないと、反転攻勢に打って出ようとしている。


来年は家電量販店、小売家具、ホームセンター業界で、100年に一度と思われる巨大台風が吹き荒れそうだ。