政府は11月19日、コロナ禍で低迷する日本経済を活性化するための経済対策を閣議決定した。
財政支出は55.7兆円と、過去最大になったと新聞各紙は報じた。しかし、それはとんでもないまやかしだ。
55.7兆円のうち融資や地方の支出を除いた国費は43.7兆円で、決算剰余金や昨年度からの繰り越しを除いて、実際に補正予算に計上されるのは31.9兆円にすぎないのだ。
昨年度は、第3次まで補正予算が編成され、その総額は76.8兆円となっている。今年度の補正予算は今回で最後だろうから、実質的な経済対策の規模は、昨年の58%減というのが本当の姿なのだ。
具体的な政策で見ると、財政緊縮はより鮮明になる。昨年、国民に一律10万円給付された特別定額給付金は、18歳以下に限定された。18歳以下の人口比率は16%だ。しかも、主たる生計の担い手の年収が960万円以下という所得制限がかかったため、最終的に対象となるのは国民の14%程度だろう。つまり、国民給付の予算は86%減ということになる。
岸田文雄総理は、経済的に困窮する学生にも10万円の給付を行うとしたが、同様の支援は昨年も実施されており、給付の上限は20万円だった。支援額は半減だ。
政府の肝入りで始まったGoToトラベルも、補助が大幅に引き下げられる。従来35%だった旅行代金の割引率が30%に引き下げられ、割引の上限も1万4000円から1万円に引き下げられる。クーポン券の上限も従来は6000円だったが、再開後は平日3000円、休日1000円と大幅減額になる。
今回の経済対策は強烈な緊縮
唯一、大きな支援とされるのが、中小企業に最大250万円を給付する「事業復活支援金」だ。昨年の持続化給付金が最大200万円だったのに対して、上限額を大きく引き上げた。そして、持続化給付金が50%以上の売上減を要件としていたのに対して、事業復活支援金は30%減少までと、要件を緩和したのだ。
まだ制度の詳細は明らかにされていないが、中小企業庁が事務作業を委託する業者の公募を始めており、その実施計画書を見ると制度のアウトラインが分かる。
まず、対象期間は今年11月から来年3月までの5カ月間で、その中で1カ月でも、前年あるいは前々年の売り上げから30%以上減少した場合に給付される。50%以上減少の場合は、最大250万円、30%以上減少の場合は、最大150万円だが、持続化給付金のときにはなかった「事業規模に応じて」という条件が加わった。
事業規模の区分は公表されていないが、一部の情報では、最大給付の対象は年商5億円以上の企業と言われている。それでは、年商が数千万円の中小企業への給付はどうなるのか。ヒントは、個人事業主の扱いにある。
事業復活支援金の場合、個人事業主への最大給付は50万円だ。持続化給付金の際には最大100万円だったから、今回の給付金は昨年の半分の支援規模で設計されている。だから、普通の中小企業の上限は100万円になる可能性が高い。しかも、売り上げの判定期間が、感染が収束した11月以降の5カ月だから、対象となる企業はかなり少なくなるだろう。
結局、今回の経済対策は、強烈な緊縮になっている。これで、経済がよくなるはずがないだろう。
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