喜ぶべきか、憂うべきか。大相撲界は照ノ富士の一強時代に突入した。2年ぶりに福岡市の福岡国際センターで開催され、今年の締めとなった九州場所は、11月28日、一人横綱の照ノ富士の2場所連続、6回目の優勝で幕を閉じた。
横綱になっていきなり2連覇というのは、昭和37年初場所の大鵬以来、59年ぶり史上5人目。あの数々の記録を塗り替えた白鵬でさえ、成し得なかった快挙だ。それも圧勝一色の全勝である。
今場所の照ノ富士は、ただ強いだけではなかった。これまでにはなかった頭脳的プレーを随所で垣間見せたのだ。例えば14日目の阿炎戦。キャバクラ遊びがバレて出場停止を食らい、7場所ぶりに幕内に復帰した鼻息荒い相手に、「こっち(の体)が伸びないと、相手も伸びない」と、あえて土俵際まで攻めさせ、右足一本で残して反撃するやアッという間に押し倒した。
全勝がかかった千秋楽の貴景勝戦もそうだった。何度も苦杯をなめさせられた相手の攻めを余裕で残し、苦し紛れに引いたところを難なく押し出した。
白鵬が照ノ富士に変わっただけ…
照ノ富士も優勝インタビューで、この硬軟織り交ぜた相撲を自画自賛している。
「受けて、受け止めて、自分の形を作って相撲を取る。昔からずっとやってきたことが、徐々にできるようになってきた。ちょっとずつ、理想の相撲になりつつある」
人一倍、大きな体に加えて、こんな隙のない相撲を取られては、対戦相手もたまったものではない。いかに突出しているかは、最終的に貴景勝に3差もつけたことでも分かる。
「ただ、照ノ富士の強さが目立った半面、次の横綱候補、対抗馬がまったく育っていないのも事実。当分、照ノ富士時代が続きそうで、大相撲界のスター不足、若手の伸び悩みは深刻です」(担当記者)
白鵬が引退しても、主役が照ノ富士に変わっただけ。大相撲界で一人勝ちの構図が続くことに変わりはない。
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