『みんな大好き陰謀論-ダマされやすい人のためのリテラシー向上入門』(ビジネス社:内藤陽介 本体価格1500円)~本好きのリビドー/悦楽の1冊

80年代から90年代にかけ憎たらしいほど強かった常勝西武を作り上げたのは、広岡達朗とその後を継いだ森祇晶。前者は現役時代に川上哲治と対立して球団を追われ、後者はかつての栄光のV9戦士とはいえ、ともに巨人出身の監督であるのに違いはない。

ここ最近でいえば、圧倒的な力を見せつけて連続日本一を重ねる(昨年などシーズン2位でCSから日本シリーズまで負けなしの8連勝)ソフトバンクが文句なしに最強チームだろうが、それとて、前身であるダイエーホークスの頃から手塩にかけて地盤を形成した、やはり巨人OBの王貞治会長という功労者あってのこと。

そこでひそかに囁かれるのが読売グループ内部における秘密組織の存在で、何と半世紀以上前から、ジャイアンツばかりが突出するあまり、プロ野球界全体の地盤沈下と人気の低下を招くのを全力で回避するための秘策が、その場で日夜、血眼で練られているのだとか。

みんな大好き「あれって実は」の与太話

そして、これは、と目を付けた成長株の球団には、指導者として傑出した資質を持つ巨人OBが、あえて悪役的な身ぶりも演じつつ送り込まれ、やがて巨人を粉砕。G党には精神的にわざと危機感を覚えさせて活を入れ、結果、球界の活性化にもつながるサイクルが完成するわけ…と、ここまでは、かつて耳にして一番笑った陰謀論で、巨人じゃなくて虚言だが、題名通り「あれって実は、」と切り出される話は誰でも大好物だ。

〝ユダヤ資本が、フリーメーソンが、裏で世界を支配している〟〝東日本大震災は某国の開発した地震兵器を使って人工的に引き起こされた〟といった類の与太は見事に種尽きまじ。30分で分かる云々の動画ではなしに、地道に本書を読んで迂闊さを免れる為の勉強に励む他、打つ手はなかろう。

(居島一平/芸人)