蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~プロスポーツ選手として大事なこと

日本ハムファイターズの新監督に就任した新庄剛志〝ビッグボス〟が、旋風を巻き起こしている。


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記者会見では「僕がプロ野球を変えていきたいという気持ちで帰ってきました」と言い切り、秋季キャンプでも常に話題になるようなファッションや言動で、同時期に行われていたクライマックスシリーズが霞むほどの存在感を発揮した。


自由奔放なスタイルの新庄監督に苦言を呈する野球関係者もいるみたいだけど、俺は全然アリだと思う。新庄ビッグボスの登場で、野球に興味を持ったという人も多いはずだからね。


野球に限らず、最近の日本のプロスポーツ界は、アマチュアイズムが強いというか、寡黙で真面目な選手が増えていて、プロとして一番大切な部分をちゃんと習ってない気がする。


自分の成績やキャリア形成を第一に考えている選手ばかりになると、プロスポーツ界全体がつまらなくなる。競技としてやっているならそれでもいいかもしれないけど、プロならそれ以前にお客さんが入ってるのか、見て楽しんでくれてるかを気にしないといけない。


アメリカのプロスポーツ選手というのは、そこを何よりも理解しているよね。ある意味で実力主義で、成績で評価されるというのは日本以上なんだけど、人を喜ばせる、見た人に元気や勇気を与えるのがプロスポーツだという意識をハッキリと持っている。


日本は、ファンもちょっと真面目すぎる。今、新庄監督のパフォーマンスを批判したり、「プロである以上は成績がすべて」みたいな考え方を強く持ってるのは、40~50代くらいの人たちなんじゃないかな。


それより上の60~70代くらいで、ON時代を生で見てきたような世代は、もっとおおらかに野球観戦を楽しんでたりするからね。

今もプロレスは“面白い”と伝えたい

プロレスも似たところがあって、上の世代ほど身近なものに感じてくれている。俺も仕事の繋がりで年配の経営者の方に挨拶することがあるけど、そのくらいの年齢だとプロレスなんて見ないだろうし、偏見もあるだろうなと思ってしまう。

秘書の人も「いや、蝶野さん申し訳ないんですが、たぶんウチの会長はプロレスのことはまったく分からないので、失礼があるかもしれないです…」なんて事前に言ってくるしね。


その時会った方は70歳くらいだったんだけど、話してみたら「蝶野さん、私はニューヨークに留学してた時にジャイアント馬場さんと飛行機で隣り合わせだったんですよ」とか、「滞在中はマディソン・スクエア・ガーデンに毎週見に行ってました」とか、プロレスを楽しんでいたエピソードがどんどん出てきた。まわりにいた幹部が、みんな「そんな話、初めて聞いた」みたいな顔をしてたよ。


プロレス界は、こういう世代の人にも「今も面白いですよ」と伝える作業をしないといけないよね。だからこそ新庄監督のやってる集客主義というのは、本来は当たり前のことなんだよ。


会見で「優勝を狙ってない」とか言ってたけど、あれもクレバーだよね。あの一言で「これで優勝したら面白い」とファンも応援するし、選手も心のどこかで優勝を意識する。新庄監督はすごく頭のいい人だと思うから、これでお客さんが1人でも増えたら勝ちだと思ってもらいたいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。