(画像)Krakenimages.com / shutterstock
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創価学会に押し寄せる「超高齢化」の大津波/ジャーナリスト・山田直樹

国土交通大臣を務めた太田昭宏氏をはじめ、8人の高齢議員が引退した公明党。8名の引退で、さぞかし若返りしたかに思える公明党当選者も、2017年総選挙時で平均年齢56.5歳が、わずか0.1歳低下したにすぎない。データ分析のプロ、本川裕氏の調査によると、目立って平均年齢が下がった(0.9歳)のは、大化けした日本維新の会だけ。公明党の名誉のために付け加えておくと、ロートル議員が最も多く平均年齢が高いのは共産党である。


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では、公明党を支持する創価学会の方はどうだろう。


池田大作名誉会長は1928年1月2日生まれの93歳。来年の箱根駅伝競走往路の日に齢を重ねるわけだ。学会本体だって負けていない。現在の原田稔氏が会長に就任したのは2006年11月9日だから、かれこれ15年間もトップに君臨してきた。原田氏は80歳。宗教法人の責任者(理事長)である長谷川重夫氏も原田氏と入信年次は1953年の〝同期〟で、年齢も一緒なのである。


ちなみに、他の新宗教はどうか。かつて創価学会には「西の天理、東の立正佼成会」なる攻撃スローガンがあった。創価学会同様、この2つの組織も衰退しつつある。しかし、こと後継者に限っては、次期トップが既に決まっている。信仰教義面と組織行政を分離したスタイルだから可能なのだが、創価学会はそれが未分化で、ある意味、前近代的スタイルなのだ。


学会総本部のある信濃町中枢の知人がこぼす。


「日本の人口ピラミッドがいずれ逆三角形になるのは分かっていますが、学会ではそれよりずっと前に同じことが起きます。だから若年層の信者獲得が何としても必要なのです」


そういう事情もあり、公明党が持ち出したのは「18歳以下の国民に一律10万円」のバラマキである。


「岸田文雄総理への〝おねだり第1弾〟でした。前回の国民1人あたり10万円の定額給付金は散々な結果だったのに、またぞろです。当時は安倍晋三総理で、官房長官が菅義偉前総理。自民党案の『世帯あたり30万円』をまとめたのが政調会長だった岸田総理。財務大臣は麻生(太郎)さんでした。しかし、公明党と太いパイプを持つ菅さんの〝横やり〟で『世帯限定30万円給付』は流れ、岸田さんのメンツは丸潰れ。その時の公明党幹事長が、いわくつきの広島3区で当選した斉藤鉄夫現国交大臣という布陣でした。今回は、高市早苗さんが政調会長だから、もっと抵抗するかと思っていましたが、結局は妥協した。ただし、半額クーポンと所得制限付きにしたのは、自民党が筋を通したとも言えます」(政治部記者)

命取りの危険性「遠山事件」

そういえば、「給付金は貯蓄に回っただけ。効果なし。再給付しない」と麻生節も炸裂したが、財務大臣交代で公明党にとってはチャンス到来。が、逆に言えば、公明党側が「所得制限」などで引き下がる事情があったともとれるのだ。

1つには、かつての創価学会副会長・佐藤浩氏と菅前総理の関係のような「太いパイプ」がなかったからだろう。菅氏はコロナ世論で退陣に追い込まれたようなものだが、佐藤氏の場合は公明党にとって命取りになりかねない爆弾を抱えていた。引退劇も尋常ではなかった。定年を理由に創価学会役職を自ら退くことなど、ほとんど聞いたことがない。しかも、しばらく経ってから一般会員と同じ立場に隠居してしまったのだ。


「佐藤が公明党のホープとして引き上げたのが、辞職した遠山清彦衆院議員。この2人の関係がどうだったかが創価学会にとって命取りになりかねないんです。だから菅前総理をも動かせる佐藤をバッサリ斬った。命取りになるとは東京地検特捜部が目下、捜査中の日本政策金融公庫という政府系金融機関から、メガソーラー企業へ融資を斡旋し、リベートをいただいたという案件です。遠山元議員は現金授受は謝礼としていますが、自民党の秋元司前衆院議員のケースでは結果、実刑です。破綻寸前だったメガソーラー企業へ返却不能なカネを注ぎ込む口利きを政府系公的機関でやったとなると、悪質さでは秋元以上です」(司法記者)


遠山捜査報道では、政権寄りの読売新聞が突っ走っているのも気になるところ。東京地検特捜部が議員会館までガサ入れして立件しないケースなどあり得ないのは、永田町の常識である。


一方、「これで公明党をグラつかせる」と、知己の維新関係者が言い放つ。


「大阪、兵庫の公明党小選挙区は自民が候補を立てないバーターでやってきた。維新も今回は立てませんでしたが、次はどうなのか分かりませんよ。学会の皆さんは、比例区総得票で711万取った、勝った勝った、と騒いでいる。でもね、維新は800万票ラインを超えてるんですよ。この数字は公明党の目標値です(笑)」


確かに、彼の言い分は正しい。公明党の比例区のブロック別獲得票数を見ていくと、デコボコや濃淡のありようが見えてくる。


前回(2017年)より増加したのは、南北関東、東京、北陸信越、東海、九州沖縄である。北陸信越と東海は、増えたといっても3000~4000票台。逆に北海道、東北、近畿、中国、四国は減少し、創価学会組織の停滞模様が浮かび上がってくる。


創価学会首都圏の牙城で、「連立のシンボル」とも言われる東京12区の有権者動向にしても、創価学会は決して胸を張れる結果を出せなかった。


投開票当日のNHKの出口調査報道では、維新候補がトップだった。開票が進むにつれ、形成は逆転していくのだが、これは学会員らの期日前投票の効果であろう。

親中の公明党「国交大臣」

この選挙区では維新が共産党系候補の上をいく8万票を単独で積み上げた。そして、その差約2万票まで公明党候補は追い上げられたのだ。なぜ、公明党候補が勝利したかといえば、自民党支持者のおかげでもある。しかし、その自民党支持者の多くが、維新へ票を投じて激戦となった。

「自民党の弱体化は、大阪を見れば分かる。維新に自公で勝てないのが常態化しています。自民党が勝てないと、公明党の立ち位置が微妙になる。維新の狙いはそこです」(同)


もう1点、公明党は選挙公約の中に「中国の人権問題」と「改憲項目」を入れた。といっても、前者の内容は政府見解の〝範囲内〟の安全運転である。だが、中国からは自民党を親中で動かすための駒と見なされている。中国問題の専門家・遠藤誉氏の個人ニュースによると、『人民日報』(2017年3月30日付)には、はっきりこう記されている。以下、その要約だ。


『こんにち、公明党が政権与党の一翼を担うことには非常に大きな意義がある。なぜなら自民党を対中友好に導いていくことが可能だからだ』


『公明党は常に中国と緊密に連絡を取り合い、自民党の一部保守政治家に対して、日中関係の正しい方向から外れた言動を慎むように圧力をかけてきた。この功績は大きい』


『今後も日中関係において、公明党が日本の政党を対中友好に導いていく役割は計り知れないほど大きい』


公明党が「対中非難」を公言しても、その本気度は疑わしい。忘れてならないのは第2次安倍内閣以降、国土交通大臣ポストが、公明党の指定席である点だろう。太田昭宏氏以降、現在の斉藤鉄夫氏に至るまで4人の公明党議員が、その職を担ってきた。尖閣列島を巡る丁々発止で激務の海上保安庁は、国土交通省の外局にあたる。つまり、親中の公明党大臣が海上保安庁の上位にいるという構図なのである。


加えて、国民民主党と維新が、参院選までの憲法審査会の連続開催を強く迫ったら、改憲を党是とする自民党は断る理由がない。早晩、公明党は加憲などという生易しい立場を維持するのが難しくなるだろう。課題は山積だ。