日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『マダイ』長崎県/浦上川河口産〜日本全国☆釣り行脚

たまには釣りを忘れて観光でも…と、夜釣りまでの時間つぶしも兼ねて、長崎市内の人気観光地である眼鏡橋界隈をブラついた前回。


【関連】『カワムツ』長崎県/中島川産〜日本全国☆釣り行脚 ほか

「釣りは忘れて~」などと言いつつ、眼鏡橋の架かる中島川沿いを散策するうちに魚影を見つけて、結局、カワムツやらオイカワやらの小物釣りを楽しむことになりました。


魚や水辺を見ると竿を出したくなってしまうのは、もう病気なので仕方がありません。とはいえ、あまり粘って夜釣りに支障をきたすわけにもいきませんので、後ろ髪を引かれながらも、あくまで夜釣り前の時間調整なのだからと、言い聞かせて竿をしまいます。


さて、本来の目的でもあった、夜釣りで狙うスズキ、クロダイ釣りに向かうことにしますか。


渋滞が激しいことでも知られる夕方の長崎市内。交通量が多いことに加えて頻繁に市電が行き交い、運転は慣れないとちょっと怖いものがあります。脇道に入ると、市電の軌道上を走らなければならない部分もあり、市電の真後ろで信号待ち、などという場面もあったり。十分に注意を払った運転を心掛け、市街地中心部の浦上川河口に到着する頃には日没となりました。


岸壁を歩きながら釣り場を見渡してみると、満潮を迎えて街の灯りをユラユラと照らす水面は、いかにも釣れそうな雰囲気です。これは気が急いてしまいますなぁ…。そそくさと道具箱を開け、なんとなく感覚的に「電気ウキよりもブッ込みの方が面白いかも…」などと思い、投竿を用意します。オモリと糸、ハリを結び、エサのアオイソメを房掛けにしたら、後は適当にボチャンと仕掛けを投げ込んで待つだけのシンプルな釣りです。竿を2本並べて、リールのドラグを緩め(強く引かれると糸が出るように)、静かにアタリを待ちます。のんびりと暇な釣りではありますが、今か今かとアタリを待つこの時間は、何ともたまらないものがあります。


日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

ん? 今、ドラグ音が聞こえたような…。確認のため、竿に近寄ると1本の竿が小刻みに揺れています。ジジッ、控えめに糸が出されるのを確認してから竿を手にすると、ククンッと手応えアリ。そのまま巻き上げると、釣れ上がったのは狙いのクロダイではなくマダイでした。塩焼きにちょうどよい大きさの小ダイではありますが、ハリ掛かりは浅く、まだ序盤という気持ちの余裕もあって、「クロダイかスズキを呼んできておくれ♡」とリリース。エサをたっぷりと付けて、再び適当に仕掛けを投げ入れます。


それにしても、河口域といえばクロダイ、スズキの好ポイント。まして、すぐ後ろはパチンコ屋、対岸は県庁という街中で、小ダイとはいえマダイが釣れるとは、さすが長崎! などとご機嫌でアタリを待っていると、ジィィーーッ!! と、けたたましいドラグ音がいきなり鳴り響きました。急いで竿に駆け寄り、緩めていたドラグを締め、竿を煽ると、グンッ! という重量感とともに激しい抵抗が伝わります。「ありゃりゃ、これは小ダイなんかではないねぇ」と慎重にやりとりを開始。鋭く力強い手応えはタイ類のようで、期待しながら寄せにかかります。強い引き込みには糸を出し、丁寧に寄せてくると、水中に向けたヘッドライトの光に体高のある白い魚影が浮かびました。

情景を思い出し天然真鯛に舌鼓

「クロダイ? いや、体高があるからキビレか?」玉網を構えて魚を誘導し、無事ネットイン。岸壁に上げて改めて魚にライトを当てると、なんと、またしてもマダイです。こんな街中でまともなマダイが釣れるとは…長崎侮り難しです。

マダイ (C)週刊実話Web

そういえば、先ほど釣れた小ダイもですが、このマダイも頭が小さいわりに目が大きく、天然の特徴でもあるピンとした尻尾がずいぶんと発達した体型に感じられます。普段は外洋を泳いでいる個体なのでしょうか。いずれにせよ、このサイズはさすがにリリースというわけにもいかず、しっかりと血抜きを施してクーラーボックスへイン。晩酌は刺身で一杯ですな。


ということで、今回は天然マダイのお刺身で晩酌です。市街中心部の浦上川河口ということで、先だっての隅田川河口に当たる豊洲のサバ、ほのかに香る下水処理臭がふと頭をよぎったものの、刺身を一口食べてみると変な臭みは一切ありませんでした。適度に脂乗りの感じられる刺身は、さすが古くから魚の王様とされるマダイだけあって文句なしに美味。〝純米吟醸黎明〟のキレのよさと甘味が、マダイの旨さをさらに引き立ててくれます。


天然マダイのお刺身 (C)週刊実話Web

刺身をつまみながら、ぬる燗をチビリ。夜の静寂に鳴り響くドラグ音を思い出しつつ、何とも満たされた晩酌タイムになったのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。