エンタメ

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』/11月26日(金)より全国公開〜やくみつる☆シネマ小言主義

Ⓒ2021 Zadig Productions ⒸZadig Productions – FTV

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』
監督/アントワーヌ・ヴィトキーヌ
配給/ギャガ

ダ・ヴィンチ最後の絵画とされる「サルバトール・ムンディ」=通称「男性版・モナ・リザ」が、2017年に史上最高額510億円で落札されたことは当時のニュースで知っていました。自分が出演していたTVのクイズ番組でも出題されたのですが、押し負けてしまいました。特徴的な交差された右指のアップから徐々にズームバックされて、「さて、何の絵でしょう?」というお題だったんですが…。

しかし、あの名画にこんな欲望まみれのミステリーが隠されていた裏事情は、この作品で初めて知りました。本作は、13万円で買い叩かれてから510億円に大化けするまでに関わった画商やコレクター、仲介者、ジャーナリストなど、さまざまな人々の証言を中心に構成されたアートドキュメンタリーです。

修復に2年もかかるほどボロボロの状態で発見された「ムンディ」は、贋作とは言わないまでも、ダ・ヴィンチ本人作か、弟子たちによる作品かでも評価が分かれ、世界最高峰のロンドン・ナショナルギャラリーやルーブル美術館までも巻き込んで真作か否かで揉めに揉めます。

その一方で、投機の対象として「いくらでもいいから欲しい」という買い手が現れると商売は成立するわけで、オークションの値は釣り上がるわけです。

現在も絵の所在は明らかになっていない…

誰が510億円で落札したのかも謎に包まれていましたが、どうやらサウジアラビア王室が関係しているらしい。オイルマネーですね。

サウジといえば、去年2月に行くつもりでツアーを予約しようとしたんですが、コロナで結局行けませんでした。サウジはもともと観光業に力を入れていない国で、渡航の条件も厳しかったんです。ところが、18年の反政府記者の暗殺事件の国際的な非難をかわすつもりか、イメージアップの国策なのかは知りませんが、ようやく少し開放的になってきたので行こうと思っていたのですが…。

今現在も「ムンディ」の絵の所在は明らかになっていませんが、もし、コロナが収束した後に、隣国のアラブ首長国連邦に開館した「ルーブル・アブダビ」で公開するようなことがあったら見に出かけたいものです。

ところでオークションといえば、新聞社主催で毎年末にチャリティーオークションがあり、自分も出品しています。今年も事務局から連絡が入ったのですが、最低入札価格を2万円にするらしい。80円の色紙に描いた自分の絵が2万からだなんておこがましくて…出品を辞退することも考えたくらいです。絵の価値というのは、本当に不思議なものです。

やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。

あわせて読みたい