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人気タレントも実践! 急増する「VIO介護脱毛」~企業経済深層レポート

企業経済深層レポート (C)週刊実話Web

「このまま年を取っていったら、相当嫌なおばさんになるんですよ。だから、下半身だけはいいおばさんでいようと思って」

10月11日に放送されたバラエティー『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系)で、いとうあさこが笑いを誘いつつ、衝撃の事実を明かした。

つまり、いとうは将来的に介護されることを予期して、アンダーヘアを脱毛する「介護脱毛」を実践しているのだ。実は今、男女を問わず密かに介護脱毛する人が急増しているという。そのメリット、デメリットを含めて真相を探ってみた。

まず、一般的な介護脱毛について、美容外科業界の関係者が明かす。

「いわゆるデリケートゾーン、VIOの脱毛です。下着を着用したとき陰毛がはみ出してしまう部分をVライン、そして性器周辺をIライン、お尻の穴まわりをOラインと呼びます」

これまでのVIO脱毛は、若い女性が水着を着るときなど、おしゃれのために行うことが大半を占めてきた。ところが、ここ数年は介護脱毛の希望者が、ミドルエイジ層(40代~50代前半)で増えているという。

では、どれほど増加しているのだろうか。

「個々の美容外科が独自に調査した結果を見ると、2020年時点で10年前の約70倍と弾いているデータもありますが、総じて5年前と比較すると、40歳以上の女性で約6~7倍です。さらに、大手調査会社『矢野経済研究所』の調べによると、19年の美容医療全体での市場は17年比125.2%で約4070億円、中でも医療脱毛ジャンルが急成長しています」(同)

おむつを開けたときの強烈な臭気…

この傾向について、高齢者施設の関係者が解説する。

「排泄後の始末が困難な高齢者を介護する場合、大変なケースが多々あります。例えば、肛門付近の毛に硬い便が絡みつくと、なかなか落としにくい。また、入念に温水で洗わないと、かぶれや皮膚炎などを起こしやすいのです」

それだけではない。便や尿が陰毛に付着した際、おむつを開けたときの強烈な臭気は、ベテランの介護士でも決して慣れることがないという。

「陰毛がなければ猛烈な臭気が軽減され、便が絡むこともないので、排便後の世話が非常に楽です。また、病気予防にもなるので、高齢者にとっても痛みや痒みを回避できるメリットがあります」(同)

また、医療関係者が衛生面で指摘する。

「アンダーヘア周辺の毛や皮膚は、きれいにしたつもりでも排泄物が残りやすく、抵抗力の弱い高齢者は感染症を引き起こしやすい。例えば雑菌が尿道に侵入すれば、尿路感染症にもかかりやすくなり、命に関わる重篤な症状を招くこともあります」

つまり絶対ではないが、VIO脱毛は感染リスクを減らすことにもつながる。

大学の社会福祉担当教員が言う。

「介護される側の〝迷惑をかけたくない〟という意識が、肉親を介護する機会の多い40代前後の女性たちに伝わり、自ら介護脱毛を希望する人が増えているのでしょう」

また、前出の医療関係者が、介護脱毛の背景について言及してくれた。

「現在の医療レーザー脱毛機は毛のメラニン色素に反応するので、高齢になってアンダーヘアに白髪が増えると、脱毛が困難になる。そのため、ヘアが黒いうちにと脱毛を急ぐのです。白髪でも脱毛する手法はあるが、コストがかかる上、それを施す医療機関が極端に少ないのです」

一番の大きなネックは時間と資金

さて、各専門家の話を聞く限り、VIO脱毛のメリットは多いが、一方で懸念がないわけではない。

「デリケートゾーンは、他人にすべてをさらけ出さないと脱毛できませんが、それに対して抵抗のある方も多い。そうした人たちを社会風潮で〝脱毛は必要だ〟と、追い込まないことも肝心です」(同)

一度、脱毛すると、元には戻せないことも留意すべきである。

「いざ介護を受ける段階になったとき、デリケートゾーンが丸見えになることで、初めて恥ずかしいと感じる人がいます。また、日本では欧米や南米ほどVIO脱毛が浸透していないため、温泉などに入る際に多少の恥ずかしさを感じる人もいるでしょう」(同)

そして、一番の大きなネックは時間と資金だ。経営コンサルタントが指摘する。

「VIO脱毛の費用は、最低でも10万円から15万円程度で、時間も半年程度かかる。一般家庭の40代といえば、教育費や家のローンでお金がかかる時期。介護を受ける30年、40年先を見越して、それだけの投資をするのは、かなりの負担になります」

しかし、冒頭で紹介したように、有名タレントが介護脱毛について語る影響は大きい。いとうのほかにも大久保佳代子、小林麻耶、ロンドンブーツ1号2号の田村淳らも、介護脱毛していることを告白している。こうした流れもあり、日本における介護脱毛は今後も認知度を高めていく気配だ。

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