10月31日の午後8時ごろ、新宿に向かって走る京王線の特急電車内で、男がやにわに乗客の男性(72)の顔に殺虫剤を噴射し、胸を刃渡り30センチのサバイバルナイフで突き刺した。他の乗客が一斉に逃げ惑う中、男はナイフを振りかざして車内を突進し、床にオイルをまいて火を放った。
乗客が緊急ボタンを押したことで、電車は東京・調布市の国領駅に緊急停車。警察官が駆けつけたところ、男は右手にナイフを持ってシートに座り、タバコをくゆらせていた。
乗客17人に重軽傷(刺された男性は重体)を負わせ、殺人未遂容疑で逮捕された男は、住所、職業不詳の服部恭太容疑者(24)。犯行時は『バットマン』シリーズに登場する悪役キャラ「ジョーカー」の仮装とみられる青のスーツ姿だった。
「服部容疑者は『なるべく多くの人を殺したかった。8月に起きた小田急線の事件を参考にした』と供述。事件を起こそうと思い立った6月に、約1万5000円でナイフを購入し、『あの事件ではサラダ油で火がつかなかったのでライターオイルを使った』と話している」(捜査関係者)
服部容疑者は1996年11月8日、福岡市の公団住宅に生まれ、両親と妹の4人家族で育った。派手ではなく真面目な学生生活を送っていたが、地元の高校を卒業後、いくつかの職を経て次第に鬱積した感情を抱えていったようだ。
盗撮発覚でマンガ喫茶をクビに…
「4~5年前、服部容疑者は福岡市内のマンガ喫茶に勤務していましたが、客を盗撮したことが発覚して警察沙汰になり、会社をクビになりました。最近まで勤めていたコールセンターでも、客からのクレームで配置転換を余儀なくされ、今年6月に退職しています」(社会部記者)
7月ごろに福岡を離れ、神戸、名古屋を転々とした後、9月末に上京して八王子市のホテルに宿泊。大量殺人の実行に向け準備を始めたが、滞在費は消費者金融で借りていた。
取り調べに対して服部容疑者は、「仕事で失敗したことや友人関係がうまくいかないことで、死にたいと思うようになった」「人が多いハロウィーンの日に大量殺人を実行し、死刑になりたかった」「人の死を恐れないジョーカーに憧れ、犯行の勝負服を購入した」と話している。
ジョーカーの仮装については、スーツとネクタイ、コートなど一式を「20万円ほどで買った」と供述。そのせいか、逮捕時の所持金は数千円だったという。
ここ数年、電車の乗客が無差別殺傷事件の標的となるケースが増えており、11月8日には早くも熊本県内で、京王線事件の模倣犯が出現している。電車の警備には限界があり、誰もが凶悪犯と遭遇する可能性を否定できない。これからも十分な注意が必要だ。
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