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蝶野正洋『黒の履歴書』~アニマル・ウォリアー訃報とG1クライマックス

蝶野正洋
(C)実話Web

アニマル・ウォリアーこと、ジョセフ・マイケル・ロウリネイティスさんが亡くなった。ホーク・ウォリアーとのタッグチーム「ロード・ウォリアーズ」でプロレス界を席巻した名レスラーだった。

俺は、去年の11月末にフィラデルフィアで開催されたレジェンドレスラーのイベントに行って、その時にアニマルと会って話をしている。現役時代と同じまではいかないけど、体はデカくて元気そうだったから、今回の訃報には驚いた。

アニマルはリングを降りると紳士的で温厚なんだけど、奥底に迫力を秘めているようなタイプだった。実弟のジョン(ジョニー・エース)やマーク(ザ・ターミネーター)もプロレスラーだし、スポーツ一家のエリートという雰囲気だ。

ホークは逆に荒々しいタイプというか、不良だね。地元はミネソタ州の都市ミネアポリス。スコット・ノートンとは高校の同窓生で、どっちが番長かで争っていたらしい。

そんな2人のバランスが抜群だったのもあって、ロード・ウォリアーズは一世を風靡したのかもしれない。あのビルドアップされた体で、スピーディーで破壊力があるプロレス。アニマル、ホーク、それとマネジャーのポール・エラリングの3人でいろいろ考えて、あの革命的なスタイルを作り上げたんだと思う。

それまでのプロレスは、相手の技を受けて、じっくりとしたレスリングを見せるというのが主流だった。アメリカのNWAのチャンピオンなんかは、敵地に乗り込み、地元の人気レスラーの技を受けまくって、ギリギリで競り勝って防衛するのが王道なんだよ。

UWFとロード・ウォリアーズ やってることは一緒

ロード・ウォリアーズはそこをブチ破った。バーッと入場すると、大暴れして5分くらいでフィニッシュ。日本で似たようなスタイルだった長州(力)さんたちのハイスパートレスリングにも、影響を与えたと思う。
一方的にやりたいことをやるというスタイルは、UWFもまったく同じ。だから、ルックスはまったく違うけど、UWFとウォリアーズって、やってることは一緒なんだよね。

俺たち闘魂三銃士は彼らの次世代で、同じことをやってちゃダメだと思って、そのスタイルをさらにひっくり返した。じっくり相手の技を受けるプロレスを取り戻そうと思ったんだよ。

その違うスタイルがぶつかり合ったのが、1991年に開催された第1回「G1クライマックス」。今は約1カ月間の長期勝負になっているが、当時のG1は数日でメイン級の試合を連戦する短期勝負だったから、大会自体がハイスパートだった。いま思うと、この頃が世代の移り変わりの境目だったかもしれない。

今年のG1は、新型コロナの影響で日程がずれ込んで史上初の秋開催になった。

俺はG1で5回の最多優勝記録を保持していて「夏男」なんて呼ばれたけど、本当は夏の暑い中でやる試合は苦手。秋のほうがやる気が出ただろうね(笑)。プロレスだけでなくスポーツ全般にいえるけど、真夏のクソ暑い中でやるのは無理があるよ。だから、高校野球もオリンピックも、本当は秋開催がベストだと思う。

今年のG1は選手にとってはいいコンディションで試合ができると思うから、「秋男」が誕生するのを楽しみにしてるよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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