![中邑真輔 (C)週刊実話Web](https://weekly-jitsuwa.jp/rails/active_storage/blobs/redirect/eyJfcmFpbHMiOnsiZGF0YSI6MTg0MDIsInB1ciI6ImJsb2JfaWQifX0=--935fa1c15da30943b82a17cd7b9e193f7cfaaa67/nakamura_shinsuke.jpg)
中邑真輔「イヤァオ!」~一度は使ってみたい“プロレスの言霊”
2017年4月、WWEに初登場した中邑真輔。今では王冠をかぶって「キング中邑」の通り名で呼ばれるなど、すっかり〝スーパースター〟として定着しているが、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。
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12年1月に新日本プロレスの親会社がユークスからブシロードに変わると、その宣伝戦略の効果もあって徐々に「新日が冬の時代から復調してきた」と言われ始めた。
これを受けて「久々に新日の試合を見てみようか」というファンも多かったが、そんな彼らが一様に驚いたのが、中邑真輔の変貌ぶりだった。
頭髪の半分を刈り上げて装飾の多いコスチュームに身を包み、リングの内外で体をクネらせる。アントニオ猪木の後継者として総合格闘技にも打って出た、以前の中邑しか記憶になかったオールドファンは、かなり面食らったに違いない。
そんな中邑が女性ファンの歓声を浴びながら、〝チャラ男〟然とした棚橋弘至と闘う様子を見て、「俺の知っている新日ではない」と、再度プロレス離れをした人もいたかもしれない。
中邑が「クネクネ」をやり始めたのは09年4月、矢野通らとともにヒールユニット『CHAOS(ケイオス)』を結成した頃からであった。当初は入場時に場外でクネクネしていたものが、だんだんとリング内でもクネクネするようになり、ついには「常時クネクネ状態」が定番スタイルになっていった。
コスチュームを含めてマイケル・ジャクソンを参考にしたというその動きは、スポーツ科学的には「体や精神面の緊張を解きほぐすために脱力する」と説明できようか。本人いわく「自分自身を自由に表現したらこういう形になった」ということである(ちなみにマイケル・ジャクソンが亡くなったのが09年6月だから、中邑はそれを引き継ぐ形でスタイル変更したとも言える)。
史上最年少のIWGP王者にもなったが…
02年に新日入りした中邑は、中学生の頃からのプロレスファンだったというが、入団前にアマレスと総合格闘技の経験があったことから、本人の意志とは関係なく当時の格闘技ブームに巻き込まれることになる。PRIDEやK-1に強く肩入れしていた猪木の手駒となり、「新日期待の新星」として総合格闘技のリングに駆り出された。これと並行して、新日のリングでは史上最年少のIWGP王者にもなった。
ただし、格闘技のバックボーンがあったとはいえ、アマレスでは高校時代の全国2位が最高で、総合もかじった程度だった。もちろん、プロレスでは完全なグリーンボーイであり、本格的な総合への進出やIWGPタイトルの戴冠も、当時の中邑にとっては荷が重かったに違いない。
総合ではアレクセイ・イグナショフ戦のTKO敗戦が〝謎の力学〟で無効試合となり(K-1側としても新日勢を集客の目玉にするため、簡単に負けさせたくなかった?)、プロレスでは試合運びのぎこちなさから、ファンに「しょっぱい王者」と見なされた。
04年11月の大阪ドーム大会で行われた中邑&中西学VS藤田和之&ケンドー・カシンのタッグ戦。中邑は藤田にサッカーボール・キックを浴びて敗れた後、リング上で猪木から理不尽な鉄拳制裁を受ける。
当初、ファン投票によって決まっていた棚橋とのシングル戦が猪木の強権で変更され、そのことを不服に感じた中邑が気合の抜けた試合をした…と、猪木の目には映ったのだろう。
中邑の代名詞ともなった決めゼリフ誕生の瞬間
猪木としては「勝手にカード変更されたことの怒りを試合で爆発させてみろ」との期待があったのかもしれないが、それをデビュー2年弱の中邑に求めるのは、かなり酷な話だろう。これが1つの変わり目となり、中邑はしばらく迷走状態に陥ってしまう。体重を増加させて、パワー系の悪役ファイターへスタイル変更を試みたりもしたが、かえって中邑のスタイリッシュな魅力を半減させることになった。
ライバル的存在の棚橋が、独自のスタイルに磨きをかけていく姿とは対照的であったが、それでも新日が中邑を次期エースとしてプッシュしたことで、ファンから反感を買うことにもなってしまった。
しかし、そうしたどん底を味わった末に生まれたのが、あまりに斬新なクネクネの脱力スタイルと、唯一無二の言動だった。
12年11月の大阪府立体育館大会、IWGPインターコンチネンタル王座戦でカール・アンダーソンを下した中邑は、試合後のマイクで「イヤァオ!」と絶叫した。今では中邑の代名詞ともなった決めゼリフが、誕生した瞬間である。
その後、中邑はWWEに移籍。かつて新日で「ストロングスタイル」の呪縛に苦しんだ中邑が、現在のWWEで「キング・オブ・ストロングスタイル」と呼ばれることになったのは、なんとも不可思議な巡り合わせではある。
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