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『マサバ』東京都江東区/豊洲産〜日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

秋の訪れとともに暗くなるのもずいぶんと早くなってまいりました。ワタクシ、〝夜釣り〟が大好きなものでして、暗い水面に糸を垂れているだけで何ともドキドキしてしまうんですな。

お天道様の下で竿を振る爽快感もよいものですが、静かな夜にしっとりと楽しむ夜釣りもまた趣があるものです。「股は夜開く~」なんて歌もありますし…。いや、「夢は夜開く」だったか。

そんなしっとりとした夜釣りを楽しむべく向かったのは、東京都江東区にあります豊洲ぐるり公園です。夜の公園で電気ウキを眺めながら、好機を迎えたスズキなんぞを狙おうと、帰宅ラッシュで混み合う新橋駅から〝ゆりかもめ〟に乗り込みます。始発駅なので1本やりすごして、先頭車両の先端座席に着席。湾岸エリアの美しくライトアップされたレインボーブリッジや、台場の夜景などを楽しむうちに下車駅となる市場前駅に到着です。

人通りのない静かな大通りを歩いて、豊洲ぐるり公園に着いてみると、平日の夜とあって広々とした園内に釣り人の姿はまばらです。適当な場所に荷物を置き、安物竿&安物リールに簡単な電気ウキ仕掛けをセット。エサのアオイソメをハリに付けたら適当に仕掛けを放り込んで、あとは電気ウキが沈むのを待つだけです。目を上げればレインボーブリッジや東京タワー、高層ビル群の夜景も素晴らしく、これで魚が釣れてくれれば言うことナシ。きらびやかな都会の夜景に囲まれながらも、喧騒から外れた静かな公園で、のっぺりとした暗い水面をユラユラと漂うウキの灯りを眺めるこの時間…たまらないものがあります。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

やけに走り回るその正体は?

ボケ~ッと水面を見ていると、時折パシャッと何か小魚が跳ねており、魚っ気は十分。今回の釣り場はスズキのほか、クロダイやキビレといった魚も期待できるので、いやが上にも期待は高まります。モワァッと電気ウキが沈むさまを早くオレに見せてくれ! と波間に漂うウキの灯りを眺めていると、一瞬、不規則な動きをしたか? と思うや、いきなり水中に引き込まれました。

慌てて手にした竿からはキューンッ! と鋭い手応えが伝わります。「結構イイ型では?」と、リールを巻きますが、スピード感こそあるものの重量感はそれほどでもありません。はて? それにしてもずいぶん走るような…と、魚を抜き上げてみて納得。ハリに掛かっていたのは25センチほどのマサバでした。どうりで走るわけですな。というのもマグロやカツオに代表されるサバ科の魚は止まると死んでしまうため、ハリに掛かっても休むことなく高速で泳ぎ回ります。もちろん止まらずに高速のまま泳ぎながらエサを食うので、ウキもいきなり沈むわけですね。

マサバ
マサバ (C)週刊実話Web

その後も群れが回って来るたびに勢いよくウキが沈んでマサバがヒット。モワァッとウキをゆっくり沈めるスズキやクロダイなどのアタリと違って、勢いよく沈んだ電気ウキの灯りが右に左にと引っ張り回されるさまは、これはこれで面白いものです。そして、外洋を泳ぎ回るイメージのあるこの手の青魚が、東京タワーやらお台場やらが見える東京都内の湾奥で釣れ盛るというのも、何とも場違いな感覚があってこれまた面白いものです。

隅田川の河口で釣れたサバだけに…

疾走感のある手応えに夢中になって釣るうちに、数もそれなりにまとまったようです。あまり釣れすぎても食べきれないので、まだ手応えを楽しみ足りない気もしますが、適当なところで竿を納めることにします。小振りながらもよく肥えた魚体は旨そうで、早く晩酌を楽しみたい、ということもありますし…。

マサバのシメサバ、焼魚、フライ
マサバのシメサバ、焼魚、フライ (C)週刊実話Web

「秋サバは嫁に食わすな」という言葉があり、これには相反する2つの意味合いがあるようで、いずれにしても脂が乗るこれからがマサバの旬。シメサバ、焼魚、フライにしてお楽しみの晩酌です。ビールをクッと流し込んでからシメサバを一口。小振りながらに適度な脂乗りが感じられて美味…ん? ほのかに都市河川特有の下水処理臭が香るような…。続いてフライをパクリ。サバらしい風味で香ばしく…ん? シメサバ以上に下水処理臭を感じるような…。焼きサバにかぶり付くと、完全に下水処理臭が。川魚的味わい、と自分に言い聞かせつつ完食。そういえば、豊洲は隅田川の河口に位置しているんでしたな。

脂の乗ったウマいサバを期待していただけに、ちょっと残念ではありましたが、都会の夜釣りで、青魚の鋭い手応えと沈む電気ウキを堪能できたのですから、まあヨシとしましょうかねぇ。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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