インスタ映えドリンク「バナナジュース専門店」が活況でタピオカを駆逐~企業経済深層レポート

ここ数年、空前のブームを巻き起こした「タピオカドリンク」だが、今年はそれに代わり、全国で「バナナジュース」専門店が増え続けている。なぜ、バナナジュースが〝ポスト・タピオカ〟の急先鋒となったのだろうか。

飲料市場に詳しいフードアナリストに聞いた。

「タピオカとは、熱帯で栽培されるキャッサバイモの根茎から製造されたデンプンのこと。タピオカドリンクを代表するミルクティーは台湾発祥の飲み物で、これがインスタ映えすることから若い女性を中心に人気が高まり、全国にタピオカブームが広がりました」

しかし、一方でタピオカの主成分は炭水化物だ。そこに砂糖を入れるため、タピオカミルクティーは1杯(250ミリリットル)あたり約120〜230キロカロリーとなる。ご飯1膳が約200キロカロリーと言われるので、かなりの高カロリーだ。そのため、健康や美容を気遣う人には悩ましい飲み物でもあった。

一方、ビジネスとしてのバナナジュースは、ベースのバナナに加え、フレーバードリンク、トッピングの3要素で構成され、この組み合わせでオリジナリティーを創出する。フレーバードリンクは牛乳がメインだが、豆乳やフルーツジュース、チャイなどさまざま用意されている。

さらに、トッピングに関してはアーモンド、黒ゴマ、炭、コーンフレーク、ドラゴンフルーツなど組み合わせは無限大で、プロテインや乳酸菌をトッピングできる店もある。カスタマイズの楽しさをエンターテインメントとして、店と客が共有できるのだ。

コロナ禍における“巣ごもり”も「バナナジュース専門店」に追い風

また、バナナの本数を選択できる店もあり、バナナを1.5本にするだけで格段に濃厚さが増し、手に持てばズッシリと重い。吸うより〝食べるジュース〟という印象で、バナナ好きには満足度が高いだろう。

タピオカドリンクは甘さや食感が人気だったが、汎用性ではバナナに及ばない。多忙な現代人の食事の役目を補えるのが、バナナジュースの強みでもある。

昨年あたりから、にわかに注目され始めたバナナジュースだが、コロナ禍における〝巣ごもり〟も追い風になったようだ。

「ウイルスに強くなる体質づくり、すなわち免疫力をアップさせるにはどうしたらいいのかが取り沙汰され、そこで関心を寄せられたのがバナナジュースです。実はバナナの効能をアピールした『大人のバナナジュース健康法』(主婦の友社)という本が今年6月に発売され、各方面で取り上げられたことでブームを後押ししました」(同)

同書は、日本でのバナナジュース専門店の草分けとされる『銀座バナナジュース』のレシピを紹介したもので、〝腸のスペシャリスト〟としてメディアで活躍している松生クリニックの松生恒夫院長が監修している。バナナの効能を客観的に医学や健康面と照らし合わせて、信ぴょう性をもたらせているのだ。

「同書によれば、バナナには病原体から体を守り、免疫細胞の働きを活性化させる効果があるという。また、バナナには水溶性、不水溶性両方の食物繊維や、腸内にいる善玉菌の働きを促進させるフラクトオリゴ糖が豊富に含まれ、便秘解消にも役立つとお墨付きをもらっている」(同)

バナナの効能はそれだけではない。アレルギー症状の緩和、アンチエイジング、ダイエット効果、美肌効果、スポーツ時のエネルギー源になるなど、まさに健康、美容のためには欠かせない食品なのだ。

新規参入の垣根が低いバナナジュース専門店

バナナジュースのブームを受け、経営アナリストはこう語る。

「市場規模はまだ判然としないが、一応の手掛かりはある。財務省の貿易統計だ。日本のバナナは100%近くが海外依存なので、輸入量を見ると全貌が分かってくる。それによれば、2012年まで100万トンを超えていた輸入量が、13〜17年の間は100万トンを切っていた。しかし、18年には100万トンに回復し、バナナジュースブームの兆しが見えた19年は104万トンと、確実に増加。市場がじわじわ伸びているのは明らかで、今年はさらに増えるのが確実視されている」

しかし、このコロナ禍で外食産業は大ダメージを受けている。そのあたりの影響はないのか。

「バナナジュース専門店は、数坪の隙間スペースがあれば低資金で開店できるため、新規参入の垣根が低い。さらに、複雑な調理技術もいらず、冷蔵庫とミキサーがあれば商品作りは可能だ。また、日本におけるバナナの消費量は、ミカンやリンゴを抜いてナンバーワン。かねてより日本人になじみの深い食物のため、老若男女に受け入れられやすい。そのため、都内の繁華街だけでなく、郊外の住宅地にも出店可能で、テイクアウトにも向いている」(同)

問題はバナナの安価なイメージに比べ、ジュースは400〜600円程度と少し値が張ること、変色するのが早く賞味期限が約20分と短いことなどだが、買う側はそれ以上の価値があると認めているのだろう。

最大の懸念は海外の生産地でコロナの影響が出た場合、輸入量を確実に確保できるかどうかだ。