『老後の資金がありません！』

監督／前田哲 出演／天海祐希、松重豊、新川優愛、瀬戸利樹、加藤諒、柴田理恵、石井正則、若村麻由美、友近、クリス松村、高橋メアリージュン、佐々木健介、北斗晶、荻原博子、竜雷太、藤田弓子、哀川翔、毒蝮三太夫、三谷幸喜、草笛光子 配給／東映

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やっと私の大好きな季節になりました。涼しい空気が鼻を通って肺いっぱいに広がり、心地いい呼吸ができています！　と、言いながらも50代になると、たまに頭をよぎる〝老後のこと〟で、また息が詰まりますが。

数年前に、老後の資金は2000万円以上必要というニュースが話題になりました。年金が安く、自助努力だけではやっていけない。家族に思わぬ出費が重なることも年々増えて…。そう、今回は、そんな私たちと同じ悩みを持つ平凡な主婦、篤子が主人公の映画です。

とにかく、節約をモットーに、老後のお金をコツコツ貯めてきた彼女に、思いもよらぬ大変なことが次々と起こります。義父の死による葬式の費用、残された義母（浪費家）が引っ越して来る、娘が結婚相手を連れて来るも、結婚式の費用は折半!?　自分たちの生活費で精いっぱいなのに…。

そんな主婦・篤子を演じるのは天海祐希さん。夫役は松重豊さん。この2人の子供を新川優愛さんと瀬戸利樹さんが演じます。度重なる難題にも、〝大変なことがあっても頑張って働こう！〟と思いますが、なんと、夫婦同時に職を失うことになってしまうのです。

考えさせられる老後で本当に大切なもの

今まで、はっきりと物を言う役が多かった天海祐希さんですが、今回は普通の主婦で、しかもコメディー作品。今作において大事にしていたというのが〝間〟。少しでもズレてしまうと笑えません。でも、この作品には「映画の女神」がいると前田哲監督は言います。

篤子が唯一、自由になれるヨガ教室には親友もいて、この親友があることをお願いすることから、篤子の義理の母が変装してお芝居をしなければいけない場面。義理の母を演じる草笛光子さんの差し歯が取れるという設定かと思いきや、なんと本当に取れてしまったそうで、名女優の草笛さんはそのまま演じたそうです。これには、監督も大喜び！　差し歯なしの顔を堂々と見せるなんて、なかなかできないことですよ、ホント。

他にも、〝たった一瞬のシーンにこの人を使う？〟というゼイタクさや、至るところで見られる細かい工夫が盛りだくさん。この家族が暮らす家も実際の一軒家で私も取材に行かせていただきましたが、セットでは出すことができない温かみと、長年ここに住んでいたという美術のこだわりが満載。そんなことを楽しみながら、改めて考えさせられるのが「2000万円はどこへ行った？」。老後で大切なものは何か、そんなヒントも楽しみながら、この映画のメッセージを受け取っていただきたいです！

LiLiCo 映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほかにもラジオ、トークショー、声優などマルチに活躍中。