終盤戦に入り、上昇気流に乗ったチームがある。主砲の鈴木誠也が2カ月連続で月間MVP賞を受賞した広島カープだ。
「10月の広島は、3位の巨人相手に4勝0敗。鈴木が打つと、やはりチームが盛り上がりますね」(スポーツ紙記者)
佐々岡カープが〝鈴木中心〟と改めて証明されたのは、今年のドラフト会議だった。外野手3人、それも即一軍で活躍可能な社会人外野手を2人も支配下指名したのは、広島だけだ。
「鈴木のメジャー挑戦に備えたのでしょう」(取材記者)
順調にいけば、鈴木は来年に国内FA権、2023年に海外FA権を取得する。見返りのない海外FA権での挑戦ではなく、広島は「22年オフに動く」というのがもっぱらで、メジャーのスカウトも熱い視線を送り続けていた。
しかし、その評価は微妙だ。東京オリンピックでも見せた勝負強いバッティングはメジャー球団も認めていたが、慎重論も出始めた。
複数ポジションを守れなければ…
「侍ジャパンの4番という触れ込みの、筒香嘉智が期待外れに終わりました。大谷翔平は大活躍でしたが、メジャーで通用するタイプと適応するまで時間が掛かりそうなタイプをきちんと見極めています」(ア・リーグ中部地区スカウト)
また、広島にはヒドい前例もできてしまった。世界トップレベルの二塁守備、セ・リーグ無失策記録も持つ菊池涼介内野手が入団交渉の場で〝マイナス評価〟を受けたことだ。
「二塁しか守れないのかと。メジャーでは複数ポジションを守れる方が高く評価されます。外野手登録ならレフト、センター、ライトを守れて当たり前。内野もできないとダメ」(同)
若手時代の14年、3試合だけ三塁を守った鈴木。以後、外野しか守っていない。肩の強さ、守備範囲を問われる前に「他のポジションは?」と聞くのが、メジャーの交渉だという。
「打者・鈴木を高く評価しているのは本当です。ただ、打撃面だけで交渉するとなると、安く買い叩かれてしまうかも」(同)
菊池と同じ道をたどるのか? 佐々岡真司監督、そしてファンは大歓迎かもしれないが、外野手が飽和状態になる可能性も出てきた。
職人的センスよりも便利屋が有利…。この現実と鈴木はどう向き合っていくのだろうか。
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