日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『アユ』神奈川県小田原市/山王川産〜日本全国☆釣り行脚

年を取るとともに日のたつのが早く感じられるもので、気が付けばもう10月です。


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そういえば、今年はまだ一度もアユ釣りに行っておらず、禁漁になる前に一度くらいは楽しんでおきたいと、アユを釣りに行くことにしました。


初夏に解禁を迎えたアユは、各県や各漁協により若干の違いはあれど、だいたい10月中に禁漁となります(産卵期後に再解禁の河川もありますが)。つまり、今を逃すと来年まで「おあずけ」になってしまうのです。そして、〝年魚〟とも呼ばれ1年で寿命を迎えるアユは、〝若アユ〟と呼ばれる初夏の解禁時と比べ、終盤には大型が釣れるのも魅力なんですね。


ということで、好天に恵まれた10月初旬に向かった先は神奈川県小田原市。小田原といえばアユ釣りファンには知られた酒匂川がありますが、今回の釣場はそのような王道の場所ではありません。小田原駅からローカルムード溢れる大雄山線に揺られ、着いたのは住宅街を流れるごく普通の川、山王川です。


解禁時には、大きな川の中に立ち込んで長い竿を振る光景をTVなどでも目にしますが、今回のような街中を流れるごく普通の小さな川にも、意外とアユはいるんですね。まして、腕のないワタクシが王道の釣り場で王道の釣りをしたとて、とても釣れる気がしませんし…。


さて、到着後は川の中を見ながら川沿いの歩道を歩きます。さすがに最盛期を過ぎているので、あちこちで…というわけにはいきませんが、適度な水深と流れがある箇所ではキラッ! とアユが底石の付着藻類を食む姿が見てとれます。「いるいる…」このワクワク感がたまりません。

魚影が光れば風流も吹っ飛ぶ!

逸る気持ちを抑えつつ、安物の渓流竿にコロガシ仕掛けを結び、流れの中に沈めてからキュッと竿をしゃくります。

日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

何回か繰り返すうちにブルブルッ! と手応えが伝わりました。掛かってきたのは、この釣りでは定番外道のボウズハゼです。縄張りを持つとともに、その主食はアユと同じく石に付いた藻類。生態もアユに似ており、さえない姿ながらにアユのリーチ目と個人的には思っております。


ボウズハゼ (C)週刊実話Web

「さあ、次はアユよ! お掛かりっ!」と、竿をしゃくり続けるうちに、しゃくり上げた竿がキューンッと絞り込まれました。鋭い手応えを堪能して抜き上げたのは18センチほどのアユです。この、しゃくり上げた瞬間にいきなり伝わる鋭い手応えがこの釣りの醍醐味でもあり、クセになるんですな。


アユ (C)週刊実話Web

それほど規模の大きい川ではないこともあり、移動しながら所々にあるちょっと深くなったポイントでポツリポツリとアユを拾います。そんなにたくさん釣れなくても、秋晴れの下、黄金色に輝くススキや真っ赤に咲いた彼岸花を見ながら川沿いを歩くのは実に気持ちのよいものです。


浅いせせらぎを見ながらのんびりと歩くうちに、水深のある、よい雰囲気のポイントにさしかかりました。足を止めて流れを見ていると、明らかに良型とおぼしき魚影が、ギランッ! と午後の日差しに反射しました。「イ、イイのがいるじゃねぇか…」優しげなのんびりムードも吹っ飛び、俗物の顔になって急いで仕掛けを振り込みます。

会心の1尾! これにて満足!

秋の午後らしく、斜めから射し込むオレンジ色の日差しを受けながら、ひたすら無心に竿をしゃくることしばし。ガツンッ! ギュギューンッ! いきなり力強い手応えが伝わると同時に水底でギランッ! と、魚体が光りました。

柔らかい渓流竿を大きく曲げて力強く抵抗する魚をいなしながら寄せ、バシャバシャとくねるように水面で暴れる姿に、「バレないでっ」と祈りつつ抜き上げて手にしたのは25センチ近い良型。う~ん、今日はもうこの1尾で満足です。まだ陽はありますが道具を片付け、市内の中嶋湯にてひとっ風呂浴びてから帰路に就くことにしました。


コンビニの袋氷でしっかり冷やして持ち帰ったアユは、塩焼きと甘露煮で、ついでに数尾のボウズハゼは骨酒にして晩酌です。街の中小河川とはいえ、水質はまずまずということもあり、塩焼きは香ばしく、腸周りのホロ苦さの酒に合うことといったらありません。甘露煮も子持ちのメスが混ざっており、これまたしっとりと味わい深く美味です。


アユの塩焼きと甘露煮、ボウズハゲの骨酒 (C)週刊実話Web

そして、初めての試みながら意外と侮れなかったのが、ボウズハゼの骨酒。姿に似合わずクセがなく、香ばしいダシが感じられて、これがまた塩焼き、甘露煮ともマッチ。


街中の川ながらにアユの手応えと、秋の味覚が満喫できて満足な1日となったのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。